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2019 年度 実施状況報告書

好中球エラスターゼを標的とした再発難治性急性白血病の病態解明と新規治療開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K23912
研究機関名古屋大学

研究代表者

川島 直実  名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80844844)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワード急性骨髄性白血病 / CBF-AML / PRTN3 / 好中球エラスターゼ
研究実績の概要

セリンプロテアーゼ遺伝子のうちPRTN3遺伝子の高発現および異常転写産物の意義を白血病細胞株、AML患者検体、マウス骨髄細胞において検討した。27例のAML患者白血病細胞検体にてPRTN3mRNAの発現定量を行い、CBF-AML症例において高発現の症例を認めた。
22種の白血病細胞株においてPRTN3のmRNA、蛋白発現を検討し、高発現を認めたRUNX1-RUNX1T1-AML細胞株であるKasumi-1、SKNO-1を用い、同遺伝子のshRNAを導入しこの分子をノックダウンすると、72時間でG1停止を認め、有意にアポトーシス細胞が増加し、14日以内に死滅することを見出した。PRTN3のノックダウンにより抑制される経路を詳細に同定すべく、同ノックダウン細胞より抽出したRNAを用いRNAシークエンスを実施し、現在解析中である。
C57/BL6Jマウス骨髄細胞にMLL-AF9融合遺伝子を導入したマウス白血病細胞モデルを作成し、shRNAを用いてPRTN3ノックダウンによる生存への影響をin vitroで検証した。白血病細胞株同様、PRTN3を高発現していたこの白血病モデルにおいてもノックダウン細胞はコントロールより有意に早く死滅することが確認された。同ノックダウン細胞をマウスにそれぞれ再移植し、白血病化への影響をin vivoで検証する予定である。
マウス骨髄細胞にCBF-AML患者より同定されたPRTN3異常転写産物、野生型PRTN3をMLL-AF9融合遺伝子と共発現させ、白血病化への影響をin vivoで検証した。PRTN3異常転写産物導入群は正常型導入群よりも早期に死亡する傾向はみられたが統計的な有意差は認めず、異常転写産物の白血病化への影響は見いだせなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度予定したAML臨床検体でのセリンプロテアーゼ遺伝子のmRNA発現定量については実施できており、RUNX1-RUNXT1-AML, CBFβ-MYH11-AMLにおいて高発現例を認めたことから、CBF-AMLの病態との関与が示唆された。計画通り正常・異常セリンプロテアーゼ転写産物とCBF-AMLの病態への関与についてin vitroでの機能解析を行っており、正常PRTN3高発現細胞株での同分子のノックダウンによる生存抑制効果が確認されており、またこれらの細胞は細胞周期の停止をきたしていたことから、PRTN3分子が白血病細胞の生存に寄与する機序の一つとして細胞周期の維持・調節がかかわる可能性が示唆された。現在解析中であるノックダウン細胞のトランスクリプトーム解析により機序を明らかにすることを予定している。次年度に計画していたPRTN3遺伝子とCBF-AML発症の関わりについてin vivoで検証するマウスモデルを樹立しており、準備を進めることができている。
以上より、計画はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

前年度に実施したPRTN3ノックダウン細胞のトランスクリプトーム解析結果をもとに、PRTN3遺伝子と白血病細胞の生存維持にかかわる機序を明らかにする。
前年度in vitroで証明されたPRTN3ノックダウンによる細胞株の生存抑制効果について、MLL-AF9導入マウス白血病モデルを用い、in vivoにおいてPRTN3ノックダウンによる生存解析を行う。
セリンプロテアーゼがAMLの治療標的となる可能性について、患者白血病細胞に正常/変異型セリンプロテアーゼ遺伝子、もしくは同遺伝子に対するshRNAを導入したのち、免疫不全マウスに異種移植を行った異種移植モデルを作成し、白血病治療薬、既存のセリンプロテアーゼ阻害剤を含む分子標的治療薬を投与し、変異型セリンプロテアーゼ遺伝子発現と治療感受性の影響を検証する予定である。

次年度使用額が生じた理由

セリンプロテアーゼ遺伝子ノックダウン細胞のトランスクリプトーム解析が前年度内に終了しなかったため、その結果に基づく機能解析の費用が次年度に繰り越されることとなった。次年度においては、セリンプロテアーゼ遺伝子導入マウスモデルでの薬剤感受性の検証等と並行して、このトランスクリプトーム解析結果から想定される、セリンプロテアーゼ遺伝子発現と白血病の維持・発症に関わる経路の機能解析を実施する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Prospective evaluation of prognostic impact of KIT mutations on acute myeloid leukemia with RUNX1-RUNX1T1 and CBFB-MYH112020

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa Y、Kawashima N、Atsuta Y、Sugiura I、Sawa M、Dobashi N、Yokoyama H、Doki N、Tomita A、Kiguchi T、Koh S、Kanamori H、Iriyama N、Kohno A、Moriuchi Y、Asada N、Hirano D、Togitani K、Sakura T、Hagihara M、Tomikawa T、Yokoyama Y、Asou N、Ohtake S、Matsumura I、Miyazaki Y、Naoe T、Kiyoi H
    • 雑誌名

      Blood Advances

      巻: 4 ページ: 66~75

    • DOI

      10.1182/bloodadvances.2019000709

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] FLT3 mutations in acute myeloid leukemia: Therapeutic paradigm beyond inhibitor development2019

    • 著者名/発表者名
      Kiyoi Hitoshi、Kawashima Naomi、Ishikawa Yuichi
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 111 ページ: 312~322

    • DOI

      10.1111/cas.14274

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] FLT3-ITD変異陽性急性骨髄性白血病患者におけるGilteritinib治療感受性と白血病クローン進化の解析2020

    • 著者名/発表者名
      川島直実, 石川裕一, 金貞姫, 後藤辰徳, 西山誉大, 木原里香, 綿本浩一, 小澤幸泰, 北村邦朗, 清井仁
    • 学会等名
      第117回日本内科学会講演会
  • [学会発表] FLT3-ITD変異陽性AMLに対する第一寛解期での同種造血幹細胞移植:JALSG AML209-FLT3-SCT試験結果2019

    • 著者名/発表者名
      川島直実, 石川裕一, 熱田由子, 澤正史, 小澤幸泰, 林正樹, 河野彰夫, 冨田章裕, 前田智也, 堺田惠美子, 臼杵憲祐, 萩原真紀, 金森平和, 松岡広, 小林美希, 麻生範雄, 大竹茂樹, 松村到, 宮﨑泰司, 直江知樹, 清井仁
    • 学会等名
      第81回日本血液学会学術集会
  • [学会発表] Prospective Evaluation of Allogeneic HSCT at the First Remission for Younger Adults with FLT3 -ITD Positive Acute Myeloid Leukemia: The JALSG AML209-FLT3-SCT Study2019

    • 著者名/発表者名
      Kawashima N, Ishikawa Y, Atsuta Y, Sawa M, Ozawa Y, Hayashi M, Kohno A, Tomita A, Maeda T, Sakaida E, Usuki K, Hagihara M, Kanamori H, Matsuoka H, Kobayashi M, Asou N, Ohtake S, Matsumura I, Miyazaki Y, Naoe T, Kiyoi H
    • 学会等名
      60th ASH Annual Meeting and Exposition
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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