研究課題/領域番号 |
19K23924
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松田 諭 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30594725)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 食道癌 / 薬剤耐性 / マルチオミックス解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者らが多施設共同ランダム化比較試験によって検証中である食道癌に対する3剤併用術前化学療法の薬物療法耐性メカニズムを明らかにすることを目的としている。さらに、そこへの癌細胞老化の関与を検討することを予定している。
食道癌に対する術前化学療法抵抗性メカニズムの解明を目的とした本研究では、①化学療法前後の臨床検体、ならびに治療耐性株を用いた網羅的解析、ならびに②腫瘍微小環境において誘導されたSenescenceが治療抵抗性を惹起しているという仮説にもとづいた薬剤抵抗性メカニズムの解明を目的としている。
研究初年度である2019年には、臨床検体採取に関して慶應義塾大学医学部倫理委員会に申請し承認を得たのち、2019年10月より検体収集を開始している。すでに20例の食道癌患者における術前化学療法前後の検体について収集が終了した。あわせて、当院において過去に術前化学療法を施行された食道癌患者検体を後ろ向きに遡り40検体について、癌部のスライド選出と核酸抽出、DNA、RNAシーケンスをすでに行った。RNAシーケンスについては、結果を回収しており、現在化学療法の奏効の有無に関与し得る遺伝子発現の変化を解析中である。また、in vitroにおいては、化学療法耐性株の作成をすでに開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道癌に対する術前化学療法抵抗性メカニズムの解明を目的とした本研究では、①化学療法前後の臨床検体、ならびに治療耐性株を用いた網羅的解析、ならびに②低酸素、TGFβによって誘導されたSenescenceが治療抵抗性を惹起している」という仮説にもとづいた薬剤抵抗性メカニズムの解明を目的としている。研究初年度である2019年には、臨床検体採取に関して慶應義塾大学医学部倫理委員会に申請し承認を得たのち、2019年10月より検体収集を開始している。すでに20例の食道癌患者における術前化学療法前後の検体について収集が終了した。あわせて、当院において過去に術前化学療法を施行された食道癌患者検体を後ろ向きに遡り40検体について、癌部のスライド選出と核酸抽出、DNA、RNAシーケンスをすでに行った。RNAシーケンスについては、結果を回収しており、現在化学療法の奏効の有無に関与し得る遺伝子発現の変化を解析中である。また、in vitroにおいては、化学療法耐性株の作成をすでに開始している。
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今後の研究の推進方策 |
仮説① 術前化学療法前後の臨床検体、ならびに治療耐性株を用いた網羅的解析およびHigh throughput drug screeningシステムを用いた新規治療薬剤の同定 先述した40検体のDNA、RNAシーケンスについて、奏効と関連のある遺伝子の絞り込みを行う。あわせて、薬剤耐性株を樹立し、耐性獲得前後の遺伝子発現を比較する。そして予定通りドラッグスクリーニングに進む予定である。
仮説②「低酸素、TGFβによって誘導されたSenescenceが治療抵抗性を惹起している」という仮説にもとづいた薬剤抵抗性メカニズムの解明 先述のRNAシーケンスの対象と、化学療法後に施行された手術検体にまで拡充し、前後でのSenescence関連遺伝子発現の変化を検討することで仮説の立証をめざす。具体的には、申請者が既に同定している低酸素とTGFβ存在下で発現が変動する遺伝子群について、化化学療法前後の臨床検体における発現を評価する。さらに、食道扁平上皮癌細胞株において、薬剤耐性獲得前後におけるRNAシーケンスを通して、同遺伝子群の変動を評価する。双方において、共に変動する遺伝子群は、薬剤耐性獲得に関与している可能性が高いため、その解析を行う。さらに、Senescenceの評価には、遺伝子発現のみならず、cell cycleに関連するタンパクのリン酸化や、TGFβシグナルに関与するタンパクのリン酸化の評価も必要となるため、臨床検体の免疫染色も行っていく予定である。
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