本研究は、申請者らが多施設共同ランダム化比較試験によって検証中である食道癌に対する3剤併用術前化学療法の薬物療法耐性メカニズムを明らかにすることを目的としている。さらに、そこへの癌細胞老化の関与を検討することを予定している。 食道癌に対する術前化学療法抵抗性メカニズムの解明を目的とした本研究では、①化学療法前後の臨床検体、ならびに治療耐性株を用いた網羅的解析、ならびに ②腫瘍微小環境において誘導されたSenescenceが治療抵抗性を惹起しているという仮説にもとづいた薬剤抵抗性メカニズムの解明を目的としている。 臨床検体を用いた網羅的においては、食道癌に対して術前化学療法を施行した患者の治療前検体を用いて、RNAシーケンスを行った結果として、化学療法抵抗性を示した患者群においては、有意に間葉系細胞に特徴的な遺伝子の発現が亢進していることが示唆された。同メカニズムを検証するために、食道癌細胞株を用いて、化学療法耐性株を作成した。今後、耐性獲得前後の細胞株における遺伝子発現を比較し、臨床検体の結果と照合する。さらに現在、新規治療開発を目指し、既存の薬剤ライブラリーを用いたスクリーニングを行っている。 腫瘍微小環境における細胞老化のメカニズムに関しては、腫瘍微小環境において分泌が亢進するサイトカインが、低酸素環境と合わさることで強い細胞老化を惹起することを確認することができた。現在そのメカニズムの解明と、免疫担当細胞までを含めたSenescence細胞の役割について検討を続けている。
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