腎細胞がんにおける腫瘍免疫微小環境をミエロイド系細胞に着目してフローサイトメトリーにて解析し、臨床病理学的な情報と統合的に解析を行った。その結果腎細胞がんの腫瘍免疫微小環境は、①T細胞浸潤が多いクラスター、②ミエロイド系細胞が多いクラスター、③免疫細胞の浸潤が乏しいクラスターの3群に分かれることが判明した。そして①T細胞浸潤が多いクラスターでは全例が淡明細胞がんであり、②ミエロイド系細胞が多いクラスター、③免疫細胞の浸潤が乏しいクラスターの順に淡明細胞がんの割合が低下していくことが分かった。これらの免疫細胞種のデータと免疫チェックポイント阻害剤の効果及び生命予後データとの相関性の解析は観察期間が足りず今回は報告することができなかったが、今後十分な観察期間を経たのちに行う予定である。 今回の検討にて、腎細胞がんは免疫学的に上記3つのクラスターに分かれることが判明し、さらにクラスター内の組織型の内訳が異なることが示された。これはがん細胞の性質が腫瘍免疫微小環境の構築に影響していることを示唆しており、腎細胞がんによる腫瘍免疫微小環境構築の分子的理解の一助になると考えている。また腎細胞がんにおいて免疫チェックポイント阻害剤の効果を予測できるバイオマーカーは現在確立されていないが、今後全身治療の効果と相関するクラスター又は免疫細胞種を同定できれば、有望なバイオマーカーとして治療選択に貢献する可能性がある。
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