研究実績の概要 |
HMG-CoA還元酵素阻害剤であるスタチン系薬剤は高コレステロール血症の治療薬であるが、一部のがんを抑制する作用があることも報告されている。本研究では、スタチンが効果を発揮するがん細胞と効果を発揮しないがん細胞の違いを明らかにするため、スタチン感受性がん細胞(HOP-92)と耐性がん細胞(NCI-H322M)を用いて、スタチン投与により変動する代謝物および遺伝子発現を網羅的に解析・比較した。 スタチンの影響が顕著に表れた代謝系の1つとして解糖系が挙げられた。スタチン感受性のHOP-92細胞では、フルクトース-1,6-ビスリン酸(F1,6P)とその下流のグリセルアルデヒド-3-リン酸(G3P)の量がアトルバスタチンの用量依存的に減少した。興味深いことに、F1,6Pの1つ上流であるフルクトース-6-リン酸(F6P)の量は、スタチン処置の有無にかかわらず変化を示さなかった。すなわち、F6PからF1,6Pへの変換に関わるホスホフルクトキナーゼが、スタチン感受性のがん細胞で影響を受ける可能性があるのではないかと推察された。次に行った遺伝子発現解析において、ホスホフルクトキナーゼ発現の有意な変動を確認できたため、今後さらなる解析を進めていく予定である。
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