研究課題/領域番号 |
19K23930
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 昌学 岡山大学, 大学病院, 助教 (30641758)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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キーワード | EGFR肺がん / Drug-tolerant persisters / オシメルチニブ |
研究実績の概要 |
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子に活性型変異を有する肺腺癌に対してEGFR-TKIが奏効する。第三世代EGFR-TKIの一つであるオシメルチニブは臨床診療において活性型EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対する第一選択薬となっている(Soria JC, et al. N Engl J Med 2018; 378: 113-125)。しかし、第一・第二世代と同様、第三世代EGFR-TKIも耐性獲得が既に報告されてきており、奏効した症例もほぼ例外なく耐性を獲得することから新たな治療アプローチの開発は必須である。申請者は、新たなアプローチとして耐性出現前のdrug-tolerant persisters(DTPs)の形成阻害に着目してきた。我々はすでに、β-cateninがEGFR遺伝子変異陽性肺癌において発癌に重要であること(Nakayama,S.et al,2014)を示しているが、β-cateninの制御がEGFR-TKIの耐性にも関与することをマウスモデルを用いて検証を行った。また最近の研究にて抗アポトーシス遺伝子BCL2L1の遺伝子産物であるBCL-XLはDTPsのkey playerであることが示唆されている。実際に、申請者らが作製したEGFR肺癌マウスモデルにおいて条件的にBCL2L1をノックアウトすることによりEGFR-TKIの耐性獲得は認められていないことを確認したが、実際にβ-cateninのコンディショナルノックアウトマウスにおいてもBCL-XLの発現が低下していることを確認した。 また細胞株の実験にて、β-catenin経路の阻害がDTP形成阻害することを確認し、そのメカニズムについての詳細も明らかにした。現在、欧文誌に投稿しており、Revise中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の以前の研究成果であるβ-cateninがEGFR遺伝子変異陽性肺癌において発癌に重要であること(Nakayama,S.et al,2014)を示していることに引き続き、オシメルチニブ耐性克服の新たなアプローチとして耐性出現前のdrug-tolerant persisters(DTPs)の形成阻害に着目した。β-cateninの制御がEGFR-TKIの耐性にも関与することをマウスモデルを用いて実証することに成功しており、加えて、細胞株を用いてβ-cateninが制御する遺伝子群のうち、drug-tolerant persisters(DTPs)のkey playerも同定している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞レベルの実験においては、今回同定したdrug-tolerant persisters(DTPs)に寄与する転写因子とクロマチン上での転写制御因子等との関連を探索し、シグナル系の全容を明らかにしたい。また同様にオシメルチニブ投与例における1-2週間後の時期の検体採取を行い、single cell RNA-seq及びATAC-Seqを行うことにより、遺伝子発現、転写因子の結合やヌクレオソームのポジショニングを多元的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中の所属研究機関の変更および新型コロナウイルス感染症の影響で、実験を十分行えなかったため。 使用計画としては、次年度、RNA-seq等の遺伝子解析の実験に必要な物品費等に充当する。
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