研究実績の概要 |
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子に活性型変異を有する肺腺癌に対してEGFR-TKIが奏効する。しかし、奏効した症例もほぼ例外なく耐性を獲得することから新た な治療アプローチの開発は必須である。申請者は、新たなアプローチとして耐性出現前のdrug-tolerant persisters(DTPs)の形成阻害に着目してきた。我々は すでに、β-cateninがEGFR遺伝子変異陽性肺癌において発癌に重要であること(Nakayama,S.et al,2014)を示しているが、β-cateninの制御がEGFR-TKIの耐性 にも関与することをマウスモデルを用いて検証を行った。また最近の研究にて抗アポトーシス遺伝子BCL2L1の遺伝子産物であるBCL-XLはDTPsのkey playerである ことが示唆されている。実際に、申請者らが作製したEGFR肺癌マウスモデルにおいて条件的にBCL2L1をノックアウトすることによりEGFR-TKIの耐性獲得は認めら れていないことを確認したが、実際にβ-cateninのコンディショナルノックアウトマウスにおいてもBCL-XLの発現が低下していることを確認した。また細胞株の 実験にて、β-catenin経路の阻害がDTP形成阻害することを確認し、さらにSingle cell 解析を行うことで、β-catenin経路が耐性獲得に寄与することを明らか にした(Kashima Y, Fujii M, et al., Single-cell analyses reveal diverse mechanisms of resistance to EGFR tyrosine kinase inhibitors in lung cancer. Cancer Res. 2021)。現在、さらに欧文誌に投稿しており、再投稿中である。
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