心房細動は日常診療で最も遭遇しやすい不整脈であり、わが国の人口高齢化に伴いその絶対数は急激に増加している。また、軽症心不全の10%、重症心不全の50%に心房細動が合併しているといわれており、心房細動と心不全は密接な関係にある。ひとたび心房細動を発症すると、労作時の息切れや倦怠感といった症状を伴い、運動耐容能低下を来たすことでQOLが障害され、やがて心不全を発症し、生命予後が悪化する。しかしながら、心房細動による運動耐容能低下の機序や心不全発症に関連する因子に関しては十分には明らかにされていない。したがって、心房細動による運動耐容能低下の機序を解明し、心不全発症に関連する因子を同定することは心房細動に対する有効な治療戦略を策定する上で必要不可欠である。本研究の目的は、心房細動患者を対象に、臥位エルゴメーターを用いた運動負荷心エコー法や心肺運動負荷試験を用いて、運動時の心臓の形態や機能の変化の評価を行い、心房細動患者における運動耐容能低下の機序や心不全発症に関連する因子を明らかにすることである。
昨年度までに研究を実際に行うにあたって、北海道大学病院の自主臨床研究審査委員会に研究実施計画書や患者同意説明文書を提出し、実施の許可を得た。また、国内外の研究会や学会に参加し、研究テーマに関わる知識を深め、今後の研究遂行に役立つ情報を得た。
今年度は、昨年度までにCOVID-19感染拡大による症例登録が思うように進まなかったため、研究の延長申請を行った上で、症例登録および検査の実施、そしてデータの解析を実施し、学会発表データの作成や論文化を進めている。
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