研究課題
2019年度は効率的な糸球体内皮細胞様細胞の分化誘導を目指すとともに、生体に近い糸球体内皮 細胞が作製できていることを確認する予定であった。この目的のために、これまでにES細胞の培養実績がない当施設で、倫理委員会でのES細胞培養の承認の取得、ES細胞やiPS細胞培養系の確立を行い、安定した分化誘導を施行できる体制を確立した。具体的には複数の未分化培地や培養皿のコーティング方法、培養スケールの検討を行って、未分化を維持しつつできるだけ効率的に増殖できる培養条件の検討を行った。また今回の内皮細胞分化誘導の基礎的条件の検討を行った米国と同じ試薬の入手は困難であることから、Rock inhibitorを始めとした化合物やBMP4などの成長因子についても本邦で購入できるものへの切り替えを行い、購入先によって培養結果や分化誘導に違いがあるかどうかを検討し、限られた予算の範囲で効率的に多能性幹細胞の維持培養と分化誘導が行える条件を確立した。一方で、共同研究先のHarvard Stem Cell InstituteのCowan labとも情報交換を行い、中胚葉細胞から内皮細胞に分化誘導する途中のどのタイミング(分化誘導日数)でどれくらいの濃度の因子Xを追加すればよいかの条件設定を検討した。Day 5などの早いタイミングでは遺伝子レベルで見てもDKK2の発現はあまり上昇せず、因子追加のタイミングは内皮細胞への分化系の中で比較的遅いタイミングが良いと考えられた。濃度は少なくとも予想される範囲で3-4通りの濃度を検討して、現時点での最適濃度を確認している。
3: やや遅れている
実験計画では多能性幹細胞の培養確立から糸球体内皮細胞への分化誘導条件を検討し、分化誘導した糸球体内皮細胞の遺伝子発現をマイクロアレイで検討する予定であったが、倫理委員会の承認やこれまで多能性幹細胞を行った経験のない当施設での立ち上げに予想以上に時間がかかってしまった。またようやく培養条件を確立した段階で、コロナウイルスの影響による東北大学の行動指針レベルの引き上げがあり、予想していたよりも研究の進行が遅れてしまった。しかし、計画は着実に進行していることから、大幅な遅れはないと考えている。
大学の行動指針レベルの引き下げがあれば、速やかに培養を再開して、1年目の計画の遅れを取り戻した上で2年目の計画を遂行する予定である。安定した培養条件の確立が本計画には必須であり、その点は確立されていることから、遅れを取り戻すことは可能であると考えている。
次年度が2年計画の2年目であり、引き続き糸球体内皮細胞の分化誘導およびその特性評価を行っていく予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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