研究課題
本研究は、心筋梗塞の急性期に治療として行うPCI中に冠動脈に注入した造影剤を利用してPCI終了直後に非造影でMDCTを施行し得られる遅延造影像を用いて心筋梗塞の心筋傷害を評価した研究である。本研究の目的は、心筋梗塞後のMDCTによる遅延造影検査がMRIの遅延造影と同様に慢性期の心筋バイアビリティや急性期・慢性期予後を評価しうるかを明らかにし、MRIの遅延造影検査の代替検査となりうるか、費用対効果に優れているかを検証するということである。昨年度は研究計画の1つ目である心筋梗塞後の心筋のバイアビリティの予測に関する研究を行い、過去に報告されたMRIの遅延造影と心筋バイアビリティの関係と同様に遅延造影の深達度が進むことにより壁運動の改善が減少するということを明らかにした。この研究成果は2020年2月に英文雑誌JACC cardiovascular imaging. 2020;13:518-519に報告した。また、MDCT遅延造影による急性期合併症の評価に関しても研究を行い、MDCTによる遅延造影で心筋ダメージの範囲が広範囲であることを示すHeterogeneous enhancement(HE)という所見がみられる患者では喫煙者が多いこと、そして急性腎障害の発症や入院中心血管合併症の発生が有意に多く発生していることを明かにした。これらの研究成果は第84回日本循環器学会で発表した。今年度はHeterogeneous enhancement(HE)がみられる患者では、慢性期の心血管イベントが有意に多く発生することを第85回日本循環器学会で報告した。今後はMDCT遅延造影所見と心筋梗塞後の慢性期心血管合併症との関連に関してさらなるデータを集め、研究を進めていく予定である。
3: やや遅れている
研究計画の1つ目であるMDCT遅延造影と慢性期心筋バイアビリティとの関連に関する研究は、学会発表し論文化することができた。また、MDCT遅延造影による急性期・慢性期合併症に関する研究も学会発表を行うことができた。しかし、研究計画の2つ目である多施設前向き研究に関しては、covid-19の影響もあり、準備段階で停滞している。
今後MDCT遅延造影による急性期・慢性期合併症の後ろ向き研究に関しては、論文報告を進めていく。また、MDCT遅延造影による急性期合併症(左室内血栓・心破裂・致死的不整脈・心不全などの発症)の評価、MDCT遅延造影の有用性の検証を筑波大学附属病院と関連病院の多施設で前向きに行う研究を進めていく予定である。
cover-19により国内の学会、国際学会がオンライン開催となり旅費の出費がなくなったため。今年度は画像解析用のデスクトップPCおよびモバイルPCを購入予定であること、論文作成時の英文校正費・論文投稿費などへの使用を予定している。
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JACC: Cardiovascular Imaging
巻: 13 ページ: 518~519
10.1016/j.jcmg.2019.08.017