研究実績の概要 |
まず慢性肝不全急性増悪(ACLF)の病態解明を目的として、University College of London (UCL)の協力のもとに106名の非代償化イベントをきたした肝硬変患者の血清を用いてアポトーシスのマーカーであるcCK18および細胞死のマーカーであるCK18、そしてネクロプトーシスの経路の中心的役割と考えられるRIPK1,RIPK3,MLKLの中でRIPK3に着目してELISAを用いて測定を行った。結果として血清のRIPK3はACLF患者と非ACLF患者で有意な差がみられた。また28日後及び90日後の死亡と血清RIPK3の値がよく相関していた。また入院時ACLFでなかった患者が後にACLFへと進展する際のマーカーとしても有効であった。 またValidation cohortとして同じくヨーロッパのCANNONICstudyの331症例を用いて同様実験を行い、ほぼ同様の結果が得られることを確認し、上記の結果の信憑性を確認した。 また臨床で得られた肝組織を用いてRIPK1,RIPK3,MLKLの免疫染色も行い、ACLFにおける発現量の増加を確認した。 動物モデルではACLFモデルのラット(胆管結紮術+リポポリサッカライド投与モデル)およびマウス(四塩化炭素+ガラクトサミン投与モデル)を用いてネクロプトーシ スの役割の検証をし、ネクロプトーシスの発現が示唆され、RIPK1阻害薬であるNEC-1、RIPA56を用いてACLFモデルの肝障害が改善されたことを確認した。またアポトーシスやネクロプトーシスの関係を検討する上で、カスパーゼ活性についても調べている。
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