本研究の目的は、腎臓病が腎不全へ至る病態の解明およびその進展抑制である。その中で、本研究では可溶型RAGEを介した急性腎障害による腎尿細管障害の保護機構を解明することを目指している。これまでに、我々はreceptor for AGE(RAGE)欠損マウスが野生型マウスに比して腎尿細管障害が増強することを明らかにしてきた。 この結果を踏まえ、2019年度は大きく以下2点の研究を行った。第1に細胞培養実験系で、マウス近位尿細管細胞に対して低酸素刺激を加えたあと、可溶型RAGE添加の有無により、炎症性サイトカインや細胞増殖能の変化を比較・確認した。可溶型RAGE添加群において、炎症性サイトカインは低下し、細胞増殖能が改善することが分かった。第2に、野生型マウスおよびRAGE欠損マウスによる急性腎障害モデルに対して可溶型RAGEの投与を行い、腎病理を解析した。得られた結果から、可溶型RAGE投与群は非投与群に比して、腎障害が軽減することが判明した。 以上2点の結果から、可溶型RAGEは急性腎障害による腎尿細管障害、特に障害に対する保護に関与している可能性が示唆された。この結果について、複数の国内学会・研究会(第9回西日本腎臓病研究会、第40回日本炎症・再生医学会、第10回分子腎臓フォーラムおよび第23回日本心血管内分泌代謝学会学術総会)や国際学会(アメリカ腎臓学会)で発表を行い、多くの議論を重ねることができた。
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