本研究の目的は、腎臓病が腎不全へ至る病態の解明およびその進展抑制である。その中で、可溶型RAGEを介した急性腎障害による腎尿細管障害の保護機構を解明することを目指している。これまで、私はreceptor for AGE(RAGE)欠損マウスが野生型マウスに比して腎尿細管障害が増強することを明らかにした。 2019年度に、①低酸素刺激を施したマウス近位尿細管細胞において、可溶型RAGEの添加により、High mobility group box1 (HMGB1)をはじめとする炎症性サイトカインが低下し、細胞増殖能が改善すること、②急性腎障害モデルマウスにおいて、可溶型RAGEの投与により腎障害が軽減することの2点を明らかにした。この結果は、可溶型RAGEが急性腎障害による腎尿細管障害、特に障害に対する保護に関与している可能性を示唆するものである。 2020年度は、新たに抗糸球体基底膜抗体型糸球体腎炎モデルマウスを作成し、このモデルマウスにおける尿細管障害に対し、野生型、RAGE欠損型、野生型+可溶型RAGE投与の3群に分けて腎組織を評価した。結果は、RAGE欠損型で障害が増強し、可溶型RAGE投与によって障害が軽減しており、これまで得られた結果に矛盾しなかった。この結果も含めて、推測されうる機序をまとめ、国際学会(アジア太平洋腎臓学会総会2020)での発表を行った。 2021年度は、以上までの結果をまとめて論文投稿し、Biol Open誌に受理された(Biol Open. 2022 Jan 15;11(1):bio058852. doi: 10.1242/bio.058852. Epub 2022 Feb 4)。
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