研究課題
免疫チェックポイント阻害薬の使用症例の増加に伴い、特有の有害事象(irAE)の中でも10%以上の高い頻度で生じる内分泌障害のマネジメントは不可欠である。免疫チェックポイント阻害薬の中で最も普及し多くの症例に使われている抗PD-1抗体について、我々は最も頻度の高い甲状腺irAEに関する検討を行い、その臨床像と予後因子としての可能性を報告してきた(Yamauchi et al. Thyroid 2017, Yamauchi et al. PLOS ONE 2019)。本研究では、まず多数の症例と豊富な検査結果を含む自施設の患者データを用いた臨床研究を行い、これまで不明であった抗PD-1抗体による下垂体irAEの臨床像について検討した。結果として、当院のニボルマブ使用症例の解析から、抗CTLA-4抗体による下垂体炎とは異なる特徴を有し、特殊な甲状腺機能異常を伴うことも見出すことができ、論文報告を行った(Yamauchi et al. Clin Endocrinol(Oxf)2021)。発症機序についても検討を行った。甲状腺irAEが予後因子であるという先行研究から「甲状腺と癌の共通抗原に対する自己抗体が産生される」という仮説を立て、新規の自己抗体を探索するために患者血清と甲状腺特異蛋白を用いた共免疫沈降のアッセイ系を構築した。現在までに甲状腺irAE発症3例の血清を用いて検討を行い、これまでに報告のない自己抗体が含まれることが示唆される結果を得た(Yamauchi et al. bioRxiv 2021)。本研究を通じて、免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害についてエビデンス構築を推進しただけでなく、その発症機序に迫る新たな視点を提供する成果を得た。
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Clinical Endocrinology
巻: 94 ページ: 258~268
10.1111/cen.14349
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2021.01.14.426670