本年度はまずイオジキサノール密度勾配分画法(IDG法)単独で血漿中の細胞外小胞(EV)を分画し、分画中に神経由来蛋白が検出できるかをウエスタンブロットにて検証した。複数の神経由来蛋白の検出を試み、そのうち1つの神経由来蛋白(エンドソーム由来、細胞質に局在)を血漿EVの特定分画において検出することができた。この神経由来蛋白が存在する分画ではCD63などのEV関連蛋白も検出され、その密度からもEVに関連して存在している事が強く示唆された。 神経由来蛋白の存在量が最も多い分画(ピーク)とCD63などEV関連蛋白のピークは異なっていたが、これは血漿EVの大多数が血球由来のものであるためで、神経由来EVと血球由来EVの密度構成が異なっている事を示唆するものと考えられた。 この神経由来EV分画を更に精製度よく分離するためサイズ排除クロマトグラフィー分画法(SEC法)の適用を検討した。複数タイプのカラムを検証した結果、IDG法に比べて市販カラムを用いたSEC法による分画では粒子径分布のオーバーラップ解消が十分には行えないことが分かった。市販カラムはEVと非EVを分離する条件に最適化されている事が原因として推測された。 次いで血漿中神経由来EV分画のバイオマーカー化を試みるため、IDG法で分離した神経由来EV分画中のtau濃度測定を試みた。一定の蛋白量が得られたがその中のtauは定量限界未満であった。血漿EVをSEC法により分離して高感度ELISA法測定するとtauは定量可能であったため、IDG法の収率が十分でない可能性が示唆された。本研究内容は国内の細胞外小胞学会において口演発表した。 本研究では血漿中に神経由来EVが存在する事をIDG法により検証し、神経由来蛋白が検出できる事を示した。この分画法により神経特異的なバイオマーカー開発が更に推進されるものと期待される。
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