研究課題/領域番号 |
19K23948
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
長岡 敦子 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (20844632)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | ALDH4A1 / プロリン / 統合失調症 / 死後脳 / P5Cシンセターゼ / プロリダーゼ |
研究実績の概要 |
統合失調症は人口の1%弱が罹患し比較的頻度が高く、再発・慢性化しやすい精神疾患で社会経済的負担が大きいが、未だ発症の分子メカニズムは解明されておらず、根本的治療の実現には至っていない。統合失調症の主要な病態仮説の1つに、NMDA受容体機能低下が統合失調症の陽性症状および陰性症状を引き起こすというグルタミン酸仮説があるが、NMDA受容体機能低下に至るメカニズムは未解明である。統合失調症患者死後脳におけるALDH4A1発現上昇の所見に加え、統合失調症患者におけるプロリダーゼ活性の亢進や、血漿中でのプロリン上昇を合わせて考えると、統合失調症患者においてプロリンの合成、分解が亢進した結果グルタミン酸産生過剰を招き、二次的にNMDA受容体の機能低下につながる可能性が示唆され、今回の研究によってプロリン代謝経路が統合失調症発症に与えるメカニズムの解明に寄与できると考えられる。この知見はドパミン仮説に基づく既存の抗精神病薬とは異なる新規の観点からの創薬につながる可能性があり独創的なものである。当講座の精神疾患死後脳バンクで凍結死後脳および新潟脳研究所保管の非精神神経疾患対象例の凍結死後脳を測定対象として、ALDH4A1発現量と相関が認められたSNPsの位置する遺伝子がコードするタンパクであるP5Cシンセターゼ、プロリダーゼの発現量について測定し、ALDH4A1との関連について解析する。 当該年度は、統合失調症死後脳におけるALDH4A1の増加について、新たに死後脳内組織分布についての知見を加え、論文を英文雑誌に投稿し掲載された。プロリン代謝経路について更なる研究を進めるため、凍結死後脳組織を用い前頭前野、上側頭回などについてELISA法、免疫組織化学染色によるタンパク質発現解析を行うため、試薬の準備を進めたがCOVID-19流行のため物流が滞り届かず、研究予定が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ALDH4A1について統合失調症死後脳における増加について、新たに死後脳内組織分布についての知見を加え、論文を英文雑誌に投稿し掲載された。プロリン代謝経路と統合失調症病態の関連について調べるため、ALDH4A1発現量と相関が認められたSNPsの位置する遺伝子がコードするタンパクであるP5Cシンセターゼ、プロリダーゼの発現量についての測定を研究計画に沿って進めていたが、必要となる試薬がCOVID-19流行のため物流が滞り届かず、研究計画がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
試薬が届き次第、凍結死後脳組織を用い前頭前野、上側頭回などについてELISA法、免疫組織化学染色によるP5Cシンセターゼ、プロリダーゼの発現量についてのタンパク質発現解析を行い、その後各々のタンパク質発現量について遺伝子多型の効果について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文していた試薬が届かず、また参加予定の学会がCOVID-19感染予防のため中止となったため、計上していた物品費、旅費が使用できず残額が生じた。試薬については入手の目途はついたため順次支払いを行う予定である。
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