左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)における予後改善に有効な治療法は確立しておらず、その開発が喫緊の課題となっている。近年、HFpEFに合併する肺高血圧を標的とした治療に注目が集まっていたが、その臨床試験はいずれも予後改善効果には否定的な結果が相次いでいる。これら一連の研究結果から、早期ステージの肺高血圧患者を層別し、早期治療介入を行うことがHFpEFの予後改善を目的とした治療戦略に有用なのではないかと着想した。そこで本研究の目的は①運動負荷心臓カテーテル検査により、早期ステージの肺高血圧を層別する手法を確立し、②同法で定量された血行動態指標を正確に推定する新規血中バイオマーカーの探索を行うことである。 実施計画としては、自転車エルゴメーターを用いた運動負荷心臓カテーテル検査にて、HFpEFの肺高血圧の早期病変を確実に層別する方法を確立する。さらに、運動中にカテーテルで直接測定した肺動脈圧、肺血管抵抗の結果を基に血液サンプルから早期肺高血圧を検出できる新たなバイオマーカーを探索する。 具体的には以下のように研究を計画している。① HFpEF患者を対象に、安静時の心臓カテーテル検査及び運動負荷心臓カテーテル検査を行い、運動中の肺動脈圧および肺血管抵抗などを測定する。② 運動負荷心臓カテーテル検査による運動中の肺動脈圧、肺血管抵抗と相関する、新たな血中バイオマーカーを探索し、その診断能を検証する。③ 運動時の肺動脈圧で詳細に層別した臨床群において臨床的特徴及び予後を比較する。
研究の状況として、2019年6月に本研究の自主臨床研究事務局へ申請を行い、同年10月に受理され、12月から症例登録を開始した。その後、COVID-19の感染拡大のため、一時的に症例登録ができない時期があったが、現在も症例登録を継続中である。今後、さらに症例を増やして、予後調査も含め解析予定としている。
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