本研究の目的は、幅広いエネルギー範囲において空気のW値をより正確に決定し、エネルギー特性を明らかすることである。これにより放射線計測の不確かさを改善し、放射線利用の安全性向上に貢献する。対象のエネルギー領域は、Co-60ガンマ線、Cs-137ガンマ線および高エネルギー電子線とした。
2020年度は、空気のW値を測定するシステムの開発を行った。システムの評価はこれまでに多くの測定が行われているCo-60ガンマ線で行った。このシステムで測定された空気のW値は33.91 eVであり、不確かさは0.08 eVであった。この測定値は、現在ICRU Report 90で推奨されている空気のW値とよく一致し、さらに推奨値の不確かさよりも正確に決定することができた。2021年度は、2020年度に開発したシステムを用いてCs-137ガンマ線の測定を行ったが、空気のW値をうまく測定することができなかった。この理由として、測定で使用したCs-137線源の線源強度が弱いこと、またCs-137線源から発生するガンマ線のエネルギーがCo-60ガンマ線の半分ほど低いためであると考える。そのため、今後は線源強度が弱く、低エネルギーの線源に対しても測定できるようにシステムの改良を進めていく。2022年度は、高エネルギー電子線に対する測定を行い、現在解析中である。
今後は研究期間中にできなかった高エネルギー光子線での測定を行い、同一システムにおいて測定した一連の空気のW値を報告する予定である。
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