研究代表者は2019年4月に当施設へ転勤し、まずは当施設内での研究、動物実験を行うことができるよう、その資格を入手した。研究代表者の教室ではこれまでヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の実験が実施されておらず、これらの実験を開始できるよう当施設倫理委員会への申請や、動物実験の申請を行い、通過後、実験を開始した。まずiPS細胞を入手し、分化誘導を行った。 免疫制御性細胞として、間葉系幹細胞(MSC)の誘導は比較的安定して施行可能となった。もともと当教室ではMSCの研究が精力的に行われており、この過程で、実験に用いるモデル動物の作成、対照群となる間葉系幹細胞の投与プロトコルや、治療効果を評価するプロトコルの確立も行った。最終的には、複数のiPS細胞株からMSCを誘導し、モデルマウスやモデルラットへの細胞投与実験を行った。まだ様々な細胞株での実験中であり、明確かつ安定した治療効果を結論付けるには至っていないが、有効性に期待して実験を行っている。 他にも免疫制御性M2マクロファージなどの有効性を示す研究も当教室から報告しており、M2マクロファージの誘導も検討した。しかし造血系の細胞への誘導効率が高くはなく、MSCを誘導する方が実現可能性が高いものと考えられたため、今後はMSCの治療効果増強を目指す、といった方向性で検討していくこととした。 研究の今後の発展を見据えて、大型のモデル動物を用いた実験について、他大学との共同研究契約の締結を行った。小型モデル動物で得られた知見をもとに大型モデル動物への実験を行い、最終的にはヒトへの応用を進めていくことを計画している。
|