研究課題
切除不能な肺癌が薬物治療で根治することはない。効果の高い分子標的薬治療でも、癌細胞は一部が生き残り(初期生存)、いずれ増殖し病勢が再燃する(薬剤耐性)。本研究では患者の癌細胞を大量培養する手法を用いて、ALK陽性肺癌患者3名の癌細胞と、ALK陽性培養細胞H2228をマルチオミックス解析でスクリーニングし、初期生存規定因子を探索し、YAP1を同定し機能解析した。研究成果は英文誌に報告した。本研究が予想より早く進んだことで、本研究に含まれていた生体内イメージングを発展させ、転移性脳腫瘍を生体内で観察できるモデルを確立する試みを開始し、系のプロトタイプを完成させるに至り、種々の国際学会で発表を行い、現在論文投稿中である。次の研究課題によってさらに発展させていく計画である。本研究の社会的意義として、ALK陽性肺癌の根治を目指した多剤併用療法をトランスレーショナル研究として、患者由来の細胞を用いて検討した最初の研究であるという点が挙げられる。肺癌の薬剤耐性の研究は盛んに行われてきたが、分子標的薬治療をした際、腫瘍の一部が残存する(治療初期生存)メカニズムについてはあまり研究がなされてこなかったが、分子標的薬の効果の高さを背景に、注目を集めつつあった。この背景の中で、研究代表者らが行ったALK陽性肺癌においては、その治療初期生存のメカニズムは報告がなかった。このALK陽性肺癌における治療初期生存の機序を明らかにしたことで、完全寛解を目指した集中的な治療法の開発につなげることができ、その社会的な意義は大きい。
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