骨破壊を担うユニークな多核細胞である破骨細胞は、「骨髄」で骨の恒常性維持に重要な役割を果たす一方、関節リウマチでは「関節」の病的な骨破壊を惹起する。これまで骨髄の破骨細胞やin vitroで培養して分化させた破骨細胞様細胞の研究は精力的に行われてきたが、関節で病原性骨破壊を担う破骨細胞の研究は少ない。 本研究では、成熟破骨細胞を特異的に蛍光標識したレポーターマウス(TRAP-tdTomato)を用いてコラーゲン誘導関節炎(CIA)を惹起した。吸入麻酔管理下で生きたまま滑膜ー骨接合部を露出させ、二光子励起顕微鏡を用いて観察したところ、健常マウスには存在しない骨表面の病的破骨細胞を観察することに成功した。さらに、これら関節組織の病的な破骨細胞と、骨髄内の生理的な破骨細胞の両者を生体内で可視化し挙動を比較したところ、生理的な破骨細胞は骨芽細胞と協調しながら骨表面を緩徐に遊走し骨表面を均一に吸収する一方、滑膜の病的な破骨細胞は骨芽細胞とは解離して単独で一点の骨侵食を進めることで、50μm大の微小な穴を多数形成する様子が観察された。 さらに、既存の関節炎治療薬であるCTLA-4 Igは臨床的に関節骨破壊を抑制する効果が指摘されているが、この作用が成熟破骨細胞に対する直接的な作用なのか、破骨前駆細胞に対して作用するのか不明であった。そこで上記の関節組織のイメージング技術と、生物学的製剤を蛍光標識する技術を組み合わせることで、CTLA-4 Igが生体内で関節組織の成熟破骨細胞ではなく、破骨前駆細胞に直接結合することで、関節炎に対する治療効果を発揮することが明らかになった。本研究で確立した生体イメージング技術は、生きた骨・関節組織内の破骨細胞・前駆細胞の挙動や機能を時空間的に解析することができるため、今後、関節リウマチの病態解明や新規治療薬の開発において強力な手段となることが強く期待される。
|