研究課題/領域番号 |
19K23969
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
末冨 建 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教(4日/週) (40749842)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 心不全 / 炎症 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
本研究では,圧負荷などの慢性的心負荷によって心筋細胞内で発生した炎症シグナル、特に自然免疫系の慢性炎症シグナル(NLRP3インフラマソームシグナルなど)が周囲の細胞に伝播し、心筋組織の線維化や心収縮能低下などを引き起こすメカニズムについて検証している。まずIn vitroでの心筋負荷実験を行った。野生型マウス(WT)および CaMKII KO のNMVM(neonatal mouse ventricular myocyte)を単離培養した。これらに対して浸透圧負荷(Osmotic stretch)を行ったのち、心筋細胞を回収し各種遺伝子発現を検討したほか、培養液を回収し細胞外小胞等の各種成分を解析中である。浸透圧負荷されたNMVMでは種々の炎症遺伝子および炎症抑制遺伝子の発現が亢進していたほかCaspase-1活性の著明な増加を認めたが、KN-93を前投与したNMVMでは活性が有意に減少していた。細胞外小胞については回収が不安定でありプロトコールを改善中である。またIn vivoとしては野生型マウス、CaMKIIノックアウトマウス、心筋特異的CaMKIIノックアウトマウスに対して施行された横行大動脈縮窄術(TAC)の経過を、遺伝子発現、免疫染色、線維化、心機能変化について比較し暫定的な結果を得た。野生型マウスで認められた炎症反応、インフラマソーム活性(Caspase-1活性)、CD68陽性細胞の心筋集積、線維化および心機能低下は心筋特異的CaMKIIノックアウトマウスで抑制されていたが、CaMKIIノックアウトマウスでは更に抑制されており両群で有意な差が認められた。このことからCaMKIIは心筋のみでなく他の組織・細胞においても心筋リモデリングに寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に立案した計画に沿って、CaMKIIが心筋細胞のみでなく他の組織および細胞においても心筋リモデリングに寄与している可能性を示すことができた。部位特異的CaMKIIノックアウトマウスについては開発が遅れており次年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後使用可能となる遺伝子組み換えマウスを用いて、CaMKIIが非心筋細胞内における炎症シグナルのどの段階に作用しているかを明らかにし、心不全の治療標的としての可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
部位特異的CaMKIIノックアウトマウスの入手が遅れ、関連する初年度の研究費に未使用額が生じた。次年度に納入され次第予定の研究計画を実施する。また当初購入を予定していた、インフラマソーム活性測定キットの購入費が少なく済んだほか、学会参加費、旅費が一部不要であった。
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