研究課題/領域番号 |
19K23971
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古田 芳彦 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (60850005)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 疫学研究 / 有病率 / 発症率 / 危険因子 / 脳動脈瘤 / 脳画像 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域高齢者における未破裂脳動脈瘤の有病率と発症率、およびその危険因子を明らかにすることを目的としている。2019年度の研究実績概要は以下の通りである。 2012年の久山町高齢者調査で頭部MRI検査を受けた65歳以上の男女1,286人の脳画像データを用いて未破裂脳動脈瘤の有病率を評価した。その結果、47人に合計49個の嚢状の未破裂脳動脈瘤を認め、有病率は3.7%であった。男女別の検討では、男性が2.3%、女性が4.7%であり、女性に多くみられた。年齢階級別にみると有病率は65~69歳で2.8%、70~74歳で2.1%、75~79歳で5.0%、80歳以上で5.3%となっており、年齢の上昇とともに有意に増加した(傾向性p<0.05)。大きさ別では5mm未満が55.1%と大半を占めており、5-6mmが32.7%、7-9mmが8.2%、10mm以上は4.1%であった。部位別では中大脳動脈が34.7%と最も多く、次いで内頚動脈が24.5%、前交通動脈が22.4%、椎骨脳底動脈が14.3%、その他が4.3%であった。 続いて同年に施行した循環器健診のデータを用いて脳動脈瘤を有する危険因子についてロジスティック回帰分析を用いて検討した。女性は男性に比較して性・年齢調整後のオッズ比が2.09 (95%信頼区間 1.09-4.00)と有意に高く、多変量調整後(調整因子: 年齢、高血圧、糖尿病、血清総コレステロール濃度、BMI、喫煙習慣・飲酒・運動習慣の有無、抗血栓約仕様の有無)のオッズ比は3.66 (1.68-7.97)となった。また喫煙習慣を有すると性・年齢調整後のオッズ比は3.35 (1.36-8.30)と有意に高く、この結果は多変量調整後も同様であった。 さらに、2017年の久山町高齢者調査で撮像した頭部MRI画像のデータ整備を行った。調査対象者の脳画像データを2人の判定医が独立して読影を行い、未破裂脳動脈瘤の有無、部位、大きさを判定した。なお、2人の判定医の評価が不一致した場合は、第3の判定医も含めて総合的に評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り2012年のMRI画像および循環器健診のデータより未破裂脳動脈瘤の有病率およびその危険因子を検討した。また2017年のMRI画像についてデータセット整備がほぼ完了しており、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2012年と2017年の2回のMRI検査を受けた参加者のうち、2012年ですでに未破裂脳動脈瘤を有していた参加者を除外した者を対象として、未破裂脳動脈瘤の発症率および危険因子を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2~3月の研究会がCOVID-19流行により中止となったため、旅費を使用しなかった。次年度以降は、人件費や画像解析用ソフトウェア等の経費、学会発表の旅費が必要となる予定である。
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