研究実績の概要 |
本研究は、①ヤマビルからRickettsia japonica DNAの検出、②本疾患の流行地域における、媒介生物による被害状況と、Rickettsia japonica抗体陽性率との相関を評価し、媒介生物の地理的クラスターの同定を試み、流行地域の効率的な疾病対策に役立てることを目的としたものである。 ①ヤマビル採集とRickettsia japonicaの検出:合計175匹のヤマビルを南房総で数カ所で採集し, リアルタイムPCR検査を行い、ヤマビルからRickettsia japonicaの遺伝子検出を試みたが、検出することはできなかった。 ②住民の媒介生物への曝露とRickettsia japonica抗体陽性率の調査:千葉県勝浦市、大多喜町の住民検診、鴨川市亀田総合病院の人間ドック、の計3箇所でヤマビルやマダニの被害状況に関するアンケート調査を同意のもと施行した。結果、勝浦市293人、大多喜町1072人、亀田総合病院1021人から同意が得られ、アンケートを回収した。同様に、同意が得られた人の残血清を用いて各種ダニ媒介疾患の抗体価調査を実施した。同地域でのリケッチア感染症の病原体はOrientia tsutsugamushiとRickettsia japonicaによるものがほとんどであると考えられていたが、Rickettsiatyphiの抗体価陽性率が高いことが今回の調査で新しく判明した。また、勝浦市と大多喜町において、ヤマビルの吸血被害は住民の2割以上で経験があることが調査からわかった。 なお、R. japonicaとR. typhiの血清学的交差性についても検討し、IgM、IgGいずれにおいても約20%の頻度であることを確認し報告した。さらに急性期, 回復期の血清抗体価を比較することで交差反応を認めた42人中8人を除いては日本紅斑熱と発疹熱を鑑別することができた。
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