研究課題
狭心症や脳梗塞といった疾患に代表される動脈硬化性心疾患の危険因子の一つとして脂質異常症は広く認識されている。脂質異常症の診断は、脂質の測定数値に基づいて診断されるが、その絶対値ではなく、機能面が昨今注目されてきている。実際に、我々は様々な抗動脈硬化作用を有するとされるHDL (high-density lipoprotein: 高比重リポ蛋白)の機能が、禁煙により改善することを過去に報告した (Circulation Journal. 2014;78(12):2955-62.)。しかしながら、禁煙成功群の一部には、HDL機能が改善していない症例が認められた。同研究では禁煙により、HDL粒子を構成する脂質成分が変化し、HDL機能改善につながると立証したが、それ以外の要因として今回我々は腸内細菌叢の変化に着目した。本研究では、禁煙に伴うHDL機能改善が腸内細菌叢の禁煙前後の変化と関連するかどうかを検証することが目的である。さらに個々の腸内細菌叢によるTMAO (trimethylamine N-oxide:トリメチルアミンNオキシド)産生能の差異が、HDLのコレステロール逆転送系にどのように影響するかを検証する。HDLの主要な抗動脈硬化作用であるコレステロール逆転送系のfirst stepであるHDLによるコレステロール引き抜き能 (末梢組織の余剰コレステロールを取り込んだマクロファージからのHDLがコレステロールを引き抜く機能)を、ex-vivoの細胞を用いた測定系において被験者のサンプルから抽出したHDLを用いて解析を行う。所属機関の禁煙外来に通院されている被験者数が乏しい現状から、現在協力施設での被験者登録中であり、サンプル登録中である。今後症例数が集まった後に腸内細菌叢解析とHDL機能解析を行う予定であり、現時点では報告できる研究実績がないのが現状である。
4: 遅れている
所属施設における禁煙外来の対象被験者数が非常に限られていたため、被験者の登録に苦労している。さらに実際に便サンプルの回収に関して説明をした際に、受け入れの問題があり、症例数の増加につながらない現状がある。引き続き、地道に説明を重ねていき、協力施設を増やすことに邁進し、研究の推進化を図るように努力する。
臨床試験における被験者登録の推進化と並行し、立証実験の一つとして計画しているex-vivoの試験を行っていく。現在COVID-19の影響で、医療機関への受診自体が減少しているような状況であるが、被験者登録が進むように協力機関の拡充が重要であり、禁煙外来を有する近隣病院への協力に向けた働きかけをより活動的に行っていく。
現時点で症例登録中であり、解析が開始されていないため、次年度に繰越し使用する方針とした。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
European Heart Journal
巻: 0 ページ: 1-9
doi:10.1093/eurheartj/ehaa173
Cardiovascular Diagnosis & Therapy
巻: 9 (4) ページ: 310-318
doi: 10.21037/cdt.2018.11.04.