研究課題/領域番号 |
19K23988
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東邦 康智 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10586481)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 心筋細胞保護関連因子 / 病的ストレス感受性遺伝子プロモーター / 合成遺伝子回路 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、心筋細胞株を用いたプール型表現型スクリーニングを行った。具体的には、マウスとヒトで保存されているmicroRNAのスクリーニング、及び全ゲノムを対象としたCRISPRiとCRISPRaのスクリーニングを行った。その結果、その過剰発現または抑制が心筋細胞保護作用を有するmicroRNA及び遺伝子の候補を同定した。心筋細胞株で技術的確認実験を行った。その後、初代培養心筋細胞でそれらの効果を確認し、同細胞でも保護効果と関連するmicroRNA及び遺伝子を抽出した。さらに、ゼブラフィッシュを用いた抗がん剤誘発性心筋障害モデルでもそれらの因子の効果を確認した。候補となった因子の中には、これまでにその効果が報告されている因子も含まれており、使用したスクリーニング系の有効性が確認された。また、強い保護効果を示した因子は、これまでに報告のない因子がほとんどであり、心不全の病態生理の解明と新規治療法の開発のための大きな一歩となると考えられる。 また、心筋細胞株を用いた遺伝子プロモータースクリーニングを行った。バイオインフォマティクスにより得られたデータをもとに、合成遺伝子プロモーター・ライブラリーを作成し、全転写因子結合配列に対しスクリーニングを行った。その結果、心不全の病態で生じる病的ストレスに対して感受性を示し、かつ非ストレス条件下では作動しない合成遺伝子プロモーターの候補を同定した。技術的確認実験により、特に反応性の強い遺伝子プロモーターを同定した。同定した遺伝子プロモーターはメカニズムの面からも合理性を有するものであった。その後、初代培養心筋細胞を用いてそれらの挙動を確認し、比較的良好な反応性と特異性を示す確認した。その結果をもとに、病的心筋細胞特異的に治療因子を発現する合成遺伝子回路を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、治療因子と病的ストレス感受性合成遺伝子プロモーターの同定が完了し、合成遺伝子回路を作成することができたため、予定通り研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、作成した合成遺伝子回路の挙動の詳細をを細胞実験及び動物実験で検証する。その後、同定した治療因子を搭載し、マウス心不全モデルにおける次世代遺伝子治療の効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度予算はほぼ使い切ったが、研究計画は順調に進み、わずかな残額が生じた。令和元年度の目標はほぼ達成されており、令和二年度に予定している動物実験により多くの予算を回すことで、研究計画の推進力の向上をはかる。
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