研究実績の概要 |
本年度は当初研究計画に従い「ヒト腸上皮内UBD依存的UBL-PSM系標的分子の網羅的探索・同定」について研究を実施した。具体的にはNotch活性化とTNF-α刺激を誘導する事により「UBD依存的UBL-PSM系」を活性化する複数の条件下で細胞内蛋白を回収し、質量分析を用いた網羅的解析(iTRAQ法)等により、UBD存在下・非存在下で発現量が変化する標的蛋白の同定を試みた。その結果、以下の様な成果を得ている。 1)iTRAQ法によりNotch活性化とTNF-α共刺激を加えた際に培養したヒト腸上皮オルガノイドについて、発現量が50%以上低下し得る遺伝子群として62種の蛋白を同定した。この内、蛋白量の減少が最も著しいと予想された3種の蛋白 (AGR2, SOX9, Annexin A1)についてWestern Blot法で解析したところ、有意なタンパク量の変化は再現されなかった。 2)一方、免疫沈降法によりUBDと結合する蛋白について解析を試みたところ、オートファジー等におけるアダプター蛋白であるp62蛋白と結合することが示された。しかしながら、UBDの高発現誘導やUBD欠損細胞株におけるNotch活性化とTNF-α共刺激により蛋白発現量の変化がみられなかったことから、UBDの標的蛋白とは異なる未知の役割があるものと考えられた。3)Flagタグ付きUBD発現株と野生型細胞株においてNotch活性化とTNF-α共刺激下における蛋白発現量の変化をFLAGタグ免疫沈降後の銀染色ゲル等で解析したところ、少なくとも4種のバンド(40kD, 45kDa, 48kD, 62kD)に量的増加が認められ、UBDの新規標的分子候補と考えられたため、質量分析による蛋白同定解析を実施する方針とした。
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