本年度は当初研究計画に従い、ヒト腸上皮内「UBD依存的UBL-PSM系」の標的分子を介した機能の解析等について研究を実施した。その結果、以下の様な成果を得ている。
ヒト腸上皮細胞に於いて「UBD依存的UBL-PSM系」が分解・機能を制御する標的蛋白を同定するため、ヒト腸上皮UBD過剰発現系(UBD-OE細胞)及びヒト腸上皮UBD欠損系(UBD-KO細胞)を構築した。これら細胞でNotch活性化とTNF-a刺激を誘導する事により「UBD依存的UBL-PSM系」を活性化したモデルを作成した。また、複数の条件で細胞内蛋白を回収し、質量分析を用いた網羅的解析等により、UBD存在下・非存在下における発現量変化を指標に腸上皮におけるUBD標的蛋白の同定を試みた。その結果、1) iTRAQ法を用いた網羅的解析により、2種の標的候補蛋白の同定に成功した。2) Flagタグ付きUBD発現系(UBD-OE細胞)を用いた免疫沈降を行い、UBDと分子間結合能を有する分子の探索・同定を行った。またUBD-KO細胞を用いた解析から複数の候補バンドを同定し、質量分析による解析を行った結果、既知のp62のみならず2つの新規候補分子を同定した。これら結果より、ヒト腸上皮細胞に於いて炎症環境で発現誘導される分子UBDは、複数の標的分子を有する可能性が明らかとされた。さらに同標的分子群の蛋白分解制御を介し腸上皮機能を調節することで、炎症性腸疾患の病態に機能的な役割を有する可能性が考えられた。今後、標的分子のさらなる探索等を行うことで炎症性腸疾患における「UBD依存的UBL-PSM系」の理解が一層進展することが期待できる結果と考えている。
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