研究課題
代謝回転の早い心臓組織においては、in vivoエネルギー代謝を高精度に解析することが一切不可能であったが、我々は、独自に最適化した試薬投与方法、臓器固定・回収時間、代謝物抽出法を確立し、高感度な心臓メタボローム解析のプラットフォームを構築した。解糖系やTCA回路等、マウス心臓中心代謝を高分解・高感度に記述することに成功した。そこでこの度、心臓機能の変化が心臓エネルギー代謝様式に規定されるという仮説のもと、心臓代謝変容細胞・マウスモデルの心臓表現型と連動する代謝シグネチャの解明を進めた。(i) 薬剤負荷、(ii) トレッドミル運動試験の2つの負荷モデル下でのLDH欠失マウスの表現型解析を実施し、LDH欠失マウスの心臓機能障害による後負荷/運動への耐容能低下を示すことができた。また、メタボローム解析と網羅的心臓遺伝子発現解析によるデータ取得から、LDH欠失マウスの心臓後負荷/運動耐容能低下を説明する代謝シグネチャとして、心臓「過還元状態(電子の鬱滞)」が描出され、同代謝変化がPDH複合体のリン酸化・脱リン酸化を介し駆動されている可能性が示された。また、研究開発後半に取り掛かった「心筋炎モデル」において、病原体との相互作用が引き起こす心臓代謝変容について、網羅的心臓遺伝子発現解析のデータを取得した。病原体感染後のリアルタイム代謝フラックス解析の実験系を構築し、心筋炎モデルの酸素呼吸、嫌気的解糖の活性評価を進めた。病原体と心筋との相互作用を模した心筋炎モデルを用いて、心筋炎進行の分子的背景の中でもシグナル因子を介した重症化カスケードについて解明した研究成果を複数の学会(国内学会3件、国際学会3件)において公表するとともに、代謝シフト含め遺伝子発現変動を網羅的に解析した結果は学術論文として公表することができた(doi: 10.1101/2023.02.27.530371)。
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bioRxiv
巻: 2023.02.27 ページ: 530371
10.1101/2023.02.27.530371