研究課題
研究計画書に記載した学術的な「問い」、即ち、1)糖尿病ではフェニル硫酸(PS)産生が亢進しているか、またそのメカニズムはなにか、2)TPLをターゲットとしてDKDの新規治療薬を探索する方法はなにか、3)DKDの進行予測マーカーとしてPSの有用性を確立するために何が必要か、に沿って順に研究実績を述べる。問い1)に関して、我々は糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)と通常マウス(C57BL6)とを用いた比較実験から糖尿病マウスではPSの産生が亢進していることを明らかにした。さらにこれら2系統のマウスの糞便を用いたメタゲノム解析から腸内細菌叢が異なることを明らかにし、この腸内細菌叢の変化が糖尿病におけるPS産生亢進の要因の1つであることが示唆された。問い2)に関して、我々は独自に17種類の化合物を合成し計画書に記載したアッセイ系を用いてTPL阻害効果を評価したところ、17種類中11種類で先行研究でTPL阻害剤として用いた2-AZA-Tyrosineよりも強い阻害効果を持つことは明らかにした。この11種類の中でも特にTPL阻害効果が強かった化合物1種類を用いて2次、3次スクリーニングを進めるとともにより強大な阻害効果を有する誘導体の合成に着手している。問い3)に関して、我々は糖尿病患者において尿中PS濃度が腎機能低下、アルブミン尿増加を予測し得るかどうかを明らかにすべく本年度はUCARE studyのLCMS/MSによる尿毒素の測定を予定している保存尿検体(約650検体)の整理を行い、測定用サンプルの分注作業の準備を行った。さらに長期観察期間で見た糖尿病性腎臓病の発症・予後予測因子としてのPSの有用性評価のため、先行研究でベースラインとした年度から5年後の臨床データの収集作業を行い、大部分の収集を完了した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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