軟骨無形成症はFGFR3シグナルの亢進が病態の先天性の骨系統疾患であり、その特異的な肥満と耐糖能の関連メカニズムは単純肥満のそれとは異なる。そこで、本研究では、全身でのFGFR3シグナルの亢進を来した軟骨無形成症のモデルマウスにおいて、脂肪分布の解析や耐糖能を解析することで、そのメカニズムを解明することを目的とする。また、同マウスより抽出した脂肪細胞や骨髄細胞の遺伝子や蛋白発現を解析することで、糖代謝における本疾患の特異的な細胞レベルでの特徴を明らかにすることも目指す。 2021年度は、前年度までのヒト軟骨無形成症iPS細胞を使用した解析に引き続き、軟骨無形成症モデルマウスの導入を行った。Fgfr3遺伝子のp.Gly347Arg変異(ヒトのFGFR3遺伝子のp.Gly380Arg変異と同等の変異)を相同組み換え法を用いてノックインしたモデルマウスの凍結胚の導入を予定していたが、モデルマウス自体の妊孕性が無く、系統の維持が難しいことが判明した。このため、Cre蛋白が存在しない状態では軟骨無形成症を発症していないノックインマウスの系統と、全身でCre蛋白を発現するトランスジェニックマウスをそれぞれ導入し、それらの交配によって、その都度軟骨無形成モデルマウスを得る方法に計画を修正した。2系統の凍結胚導入は2022年5月に実現する予定であり、今後の実験は、科学研究費助成事業の若手研究「軟骨無形成症における特異的肥満の耐糖能機序の解明」(21K16354)に引き継ぐ予定である。
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