研究実績の概要 |
我々は慢性腎臓病stage 3,4 の患者を対象としたランダム化比較試験で、マグネシウム(Mg)経口投与が冠動脈石灰化(CAC)の進展を抑制したがAST120ではCACの抑制は認められなかったことを以前報告した。 Mgによる血管石灰化抑止機序や、治療反応性のバイオマーカとしてオステオプロテゲリン(OPG)に注目し、baseline及び介入1年後の血清OPGを測定したが、Mg投与群と非Mg投与群で血清OPG濃度の変化に有意差を認めなかった。またbaselineのOPG濃度によってMgのCAC進展抑制作用は修飾されなかった。以上からOPGがMgのCAC進展抑制作用に関与している可能性は低いことが示唆された。 次に血管石灰化を惹起すると報告されている尿毒症物質であるインドキシル硫酸(IS)、パラクレシル硫酸(PCS)に注目した。短期間の臨床試験ではAST120は血中IS、PCS濃度を低下させることが報告されているが、本研究ではAST120投与群と非AST120投与群で1年後の血清IS、PCS濃度の変化に有意差を認めなかった。またbaselineのIS、PCS濃度によってAST120のCAC進展抑制作用は修飾されなかった。AST120が血清IS、PCS濃度を低下させなかったことに関してはコンプライアンスの問題や、日本で臨床的に用いられるAST120 6g/日の用量が少なかった可能性が考えられた。 血清micro RNAがMgやAST-120のCAC進展抑制や、治療反応性を判別する新規バイオマーカーとなるかどうかに関しては今年度中に施行出来なかった。
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