研究課題/領域番号 |
19K24000
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
藤井 渉 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (60755643)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 膠原病関連間質性肺疾患 / シングルセルRNAシークエンス / トランスクリプトーム / 気管支肺胞洗浄液 / 肺胞マクロファージ / フローサイトメトリー |
研究実績の概要 |
マイクロウェルとmRNA吸着磁気ビーズを用いたシングルセルRNAシークエンスであるSeq-Wellのプロトコールを用いて、まずシングルセルを分注するためのPDMS製マイクロウェルを作成し、さらにプラズマクリーナーによる機能化処理を行った。次に院内倫理委員会の承認を得た上で患者同意を得て関節リウマチ、多発性筋炎・皮膚筋炎、全身性強皮症に合併する間質性疾患および対照群として特発性間質性肺炎患者計11人から気管支肺胞洗浄液、末梢血液を採取し、各20,000細胞をSeq-WellによるシングルセルRNAシークエンス、残余細胞をフローサイトメトリーにより解析した。気管支肺胞洗浄液上清、血清は後の解析のため冷凍保存した。 マルチカラーフローサイトメトリーによる気管支肺胞洗浄液中の免疫細胞の表面抗原解析により、特発性間質性肺炎と比べて膠原病関連間質性肺疾患では、関節リウマチでは好中球、多発性筋炎・皮膚筋炎ではリンパ球、全身性強皮症では単球・肺胞マクロファージが増加していることを発見した。また特発性間質性肺炎と膠原病関連間質性肺疾患では、気管支肺胞洗浄液中の単球・肺胞マクロファージは異なるフェノタイプを示した。気管支肺胞洗浄液および末梢血液細胞からSeq-Wellの手法によりDNAライブラリーを作成し、バイオアナライザーによる品質評価を行い、いずれの症例からも良質なDNAライブラリーを作成できたことを確認した。11症例のうちまず6症例について外部企業への委託により次世代シーケンサーによるシングルセルレベルのトランスクリプトーム解析を現在行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年4月時点で研究目標である20症例のうち過半数に当たる11症例のフローサイトメトリーによる解析、およびシングルセルRNAシーケンスのためのDNAライブラリー作成が完了し、バイオアナライザーによる品質評価を行った上で現在6症例のシークエンスを行っている。以上より研究計画は概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
合計20症例を目標にさらに症例数、検体数を集積する。現在シングルセルRNAシークエンスを行っているが、結果を得られ次第バイオインフォマティクスの手法による詳細な解析を行い、膠原病関連間質性疾患の各疾患(関節リウマチ、多発性筋炎・皮膚筋炎、シェーグレン症候群、全身性強皮症)間の分子生物学的病態の違い、特発性間質性肺炎との差異などについて検討し、膠原病関連間質性疾患の病態解明および新たな治療法の発見を目指す。また冷凍保存している気管支肺胞洗浄液上清、血清を用いて、上記のトランスクリプトーム解析により同定した膠原病関連間質性疾患の疾患関連遺伝子がコードするタンパク質を測定することでバイオマーカーとして臨床応用可能か検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初2019年度中にプラズマクリーナーの購入を予定していたが、年度内に納入することができなかったため、当面は協力研究機関所有の機械を共同利用しており、次年度に自施設で購入予定に変更した。また次世代シーケンサーによる解析症例数は2020年度6症例、次年度14症例の予定と次年度により多くの症例の解析を予定しており、その解析費用も次年度使用分として計上した。
|