研究課題
膠原病関連間質性肺疾患および特発性間質性肺炎23症例(うち関節リウマチ5症例、皮膚筋炎6症例、シェーグレン症候群5症例、全身性強皮症2症例および特発性間質性肺炎5症例)の気管支肺胞洗浄液および末梢血液検体を採取し、Seq-WellによるシングルセルRNAシークエンスを行った。バイオアナライザーによる品質評価ののちNGSによるシーケンスを行い、1臨床検体あたり約1000細胞の網羅的遺伝子解析を行った。気管支肺胞洗浄液検体の解析により各疾患の細胞分布の特徴、すなわち関節リウマチでは好中球、シェーグレン症候群、皮膚筋炎ではリンパ球、特発性間質性肺炎と全身性強皮症では肺胞マクロファージが気管支肺胞洗浄液中で上昇する傾向が明らかになった。さらに網羅的遺伝子解析による細胞種同定によって肺胞マクロファージは単球由来マクロファージ、組織マクロファージおよび免疫反応が活性化し補体関連遺伝子発現が増加しているマクロファージ(C1qマクロファージと命名)の各亜分画に分類することができ、膠原病関連間質性肺疾患の病態と肺胞マクロファージ各亜分画との関連について今後のさらなる研究成果が期待できる。また興味深いことに関節リウマチ関連間質性肺疾患患者の気管支肺胞洗浄液中には形質細胞様樹状細胞集団を検出し、同疾患におけるこの細胞の病原性への関与の可能性が示唆された。気管支肺胞洗浄液上清中の液性因子をmultiplex ELISAにより解析したところ、皮膚筋炎関連間質性肺疾患患者の気管支肺胞洗浄液上清中ではケモカインIL-12p40とCXCL-10が上昇しており、これが同疾患における気管支肺胞洗浄液中リンパ球増加と関連している可能性が考えられた。以上の研究結果より膠原病関連間質性肺疾患における気管支肺胞洗浄液中の免疫細胞分布の特徴が明らかになり、さらに現在各細胞群における遺伝子発現差解析を進めている。
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