研究課題/領域番号 |
19K24002
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
村山 豪 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80850908)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 全身性エリテマトーデス / インターフェロンα / 単球 / pDC / 細胞内核酸受容体 / STING / オートファジー / rapamycin |
研究実績の概要 |
①申請当初の研究目的:全身性エリテマトーデス(systemic lupus erytheatosus : SLE)の病態形成において重要な役割を果たすサイトカインとしてIFNαが注目されている。IFNαの主要産生細胞としてplasmacytoid dendritic cells(pDC)が知られている。申請者らは、pDCだけでなくconventional DC(cDC)や単球からも細胞内核酸受容体を介してIFNαが産生されることを見出した。本研究では、IFNα産生に関わる細胞内核酸受容体経路や産生細胞を同定し、更にその制御法を検討することでSLEの新たな治療戦略の基盤構築を目指した。 ②当該年度に実施した研究方法:1. IFNα産生細胞とSLE病態との関連性の検証 細胞内核酸受容体のリガンドによりPBMCを刺激し、フローサイトメーターを用いてIFNα産生細胞を検出した。核酸受容体リガンドとしてTLR7リガンド、STINGリガンドを用いた。2. 核酸受容体経路の解析:pDC・単球における細胞内核酸受容体の発現や局在の解析を行った。pDC・単球を免疫組織学的染色によりTLR7、STINGまたその下流の経路の発現や活性化についてWestern blotting等で評価した。3. 核酸受容体経路制御を介したIFNα産生抑制の確立:cGAS-STING経路は、元来オートファジーを介して細胞内DNAをクリアランスするシステムである(Nature. 2019)。rapamycinは、リンパ球の活性化を抑制することからSLEでの治験がなされているが、オートファジー作動薬としても作用する。オートファジー作動薬がSLE患者のpDCや単球のIFNα産生に与える影響を検証した。 上記解析をまとめ報告した(Murayama G, et al. Rheumatology. 2020. in press.)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要なIFNα産生細胞として注目されてきたpDC以外にも単球でもIFNα産生が確認された。本研究はIFNα産生細胞や細胞内核酸受容体をターゲットとした新規治療法や予防法の確立への発展が期待される。そこで本研究内容の核心をなす学術的な問いを以下の3点で挙げた。1) SLE病態に重要なIFNα産生細胞は何か? 2) SLE病態に重要な核酸受容体経路は何か? 3) 核酸受容体経路を制御することでIFNα産生を抑制できるのか? 1)については、IFNα陽性単球がSLE病勢と正の相関を示しており、pDC以外の新たなIFNα産生細胞の存在を提示した。2)については、STING経路の刺激によって単球からIFNαの産生を確認し、またSLE単球のSTING発現の上昇を確認しており、SLE病態に重要な核酸受容体経路としてSTINGを提示することができた。3)については、細胞内のSTING代謝を考慮しrapamycinを使用しSTING経路刺激による単球からのIFNα産生抑制を証明した。 以上の理由から、新たなSLE治療薬の可能性を提示できたため、おおむね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究結果をまとめ、論文として報告した(Murayama G, et al. Inhibition of mTOR suppresses IFNα production and the STING pathway in monocytes from systemic lupus erythematosus patients. Rheumatology. in press. 2020.)。 また計画に入っていたRNA-seqを用いたIFNα産生細胞の解析は結果は得られていないがサンプルは既に提出し解析中である。STINGリガンド刺激に対する主要なIFNα産生細胞は単球であり、その頻度はSLE患者で増加していたことから、SLEにおいてIFNα産生細胞能が亢進した特定のサブセットが増加しているのかRNA-seq を用いて明らかにする。単球をSTINGリガンド刺激し、IFNαを産生する細胞および産生しない細胞を、健常者とSLE患者からそれぞれ分取しRNA-seqによって解析する。IFNαを産生する単球の特徴を明らかにすると同時に、特異的に発現する分子を検索する予定である。それら結果を得て、SLE病態に関わる単球の特徴を見出し、新たなSLE治療基盤の構築を目指す。
|