研究課題/領域番号 |
19K24003
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
野村 篤史 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (60851201)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / 単球 / マクロファージ / Toll-like receptor 7 |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において獲得免疫系の分子をターゲットとした治療の効果は限定的であり、自然免疫系も含めた病態の解明が必要である。本研究ではTLR7のアゴニストの長期投与によりSLE病態を発症するマウスモデルを用いて、自然免疫系の細胞である単球やマクロファージの変化、とりわけ慢性期において増加するLy6Cloの単球や単球様細胞に着目し病態における役割を解析している。 イミキモド長期塗布により末梢血、リンパ組織、腎臓においていずれも単球または単球様細胞(CD11b+TLR7+)が増加し、末梢血と腎組織ではLy6Clo細胞の比率が増加していたことから、Ly6Cloの単球が慢性期の病態に重要であると考えられた。SLE病態のマウスからLy6Chi単球とLy6Clo単球をそれぞれ単離し別のマウスに移入したところ、Ly6Chi単球は組織への浸潤が乏しい一方でLy6Clo単球は脾臓や腎臓へ浸潤した。RNA-seq解析によってSLE病態を誘発したマウスにおける単球の遺伝子発現を解析したところ、Ly6Clo単球においてインテグリンなどの接着分子の遺伝子発現が上昇しており、Ly6Clo単球がLy6Chi単球に比して臓器へ浸潤しやすい要因となっていると考えられた。 また、Ly6Clo単球は免疫刺激によってIFNαの遺伝子発現を上昇させない一方、Ly6Chi単球においては核酸刺激である2’3’-cGAMPの刺激によって著明なIFN-αの遺伝子発現上昇がみられた。Ly6Chi単球はイミキモド投与初期に増加する細胞でありLy6Clo単球は慢性期に増加する単球であるが、このようにLy6Chi単球とLy6Clo単球は病態発症の初期と慢性期において、異なる役割で病態に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定していた単球の移入実験やRNA-seqの解析が進み、SLE病態における単球の役割の解析が進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seq解析においてみられたSLE病態における単球の特徴的な遺伝子変化についてさらに解析し、単球の機能を制御する分子の検討をする。また、ヒトのSLE病態との関連についても検討する。
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