全身性エリテマトーデス(SLE)の治療において獲得免疫系の分子をターゲットとした治療の効果は限定的であり、自然免疫系も含めた病態の解明が必要である。本研究ではTLR7のアゴニストの長期投与によりSLE病態を発症するマウスモデルを用いて、自然免疫系の細胞である単球やマクロファージの変化、とりわけ慢性期において増加するLy6Cloの単球や単球様細胞に着目し病態における役割を解析し、治療標的となりうる分子について検討した。イミキモドの経皮投与により初期から局所において増加するLy6Chi単球やLy6Chi単球由来樹状細胞はIFNαの産生や自己免疫の誘導に関与すると考えられる一方、慢性期に末梢血において増加するLy6Clo単球は腎などの組織へ浸潤しやすい性質があり、組織においては炎症性サイトカインの産生やケモカインの産生によって炎症病態に関与していると考えられた。単球のRNA-seq解析によって、SLE病態を発症したマウスではLy6Clo単球においてインテグリンなどの接着分子が上昇していることが組織の浸潤に関与していると考えられたため、その中で特に発現が特徴的であったα9インテグリンに注目した。同抗体の投与による腎への単球浸潤抑制の効果を検証したが十分な効果は確認できず、手法の見直しが必要であると考えられた。これまでに明らかにした単球や単球由来細胞とSLE病態に関する成果を論文にまとめ、投稿準備中である。
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