研究実績の概要 |
胎便性腹膜炎は、開腹時の所見によって、線維性癒着型(fibroadhesive type)、嚢胞型(cystic type)、汎発型(generalized type)の3病型に分類されるが、時に分類に苦慮する症例を経験することがある。2019年度、3病型に分類し難い胎便性腹膜炎に起因したMeconium hydroceleを経験し、その内容液をプロテオーム解析で分析した。同一患児から採取した検体として, 胎便性腹膜炎に起因したMeconium hydroceleの内容液(n=1)と回腸ストーマ造設後のストーマ排便(n=1), ストーマ閉鎖後の飢餓便(n=1)及び退院後の自然排便(n=1)の4検体, また, 他児から採取した検体として, 出生直後の胎便(n=4:正出生体重児1例(37週5日, 3,123g), 低出生体重児2例(34週4日, 双胎, 1,959g及び2,041g), 超低出生体重児1例(23週0日, 449g), 乳児の自然排便(n=3)の7検体, 合計11検体をプロテオーム解析で分析し比較検討した。その結果、Meconium hydroceleの内容液中の, 約4000種類のヒト由来タンパク質が同定でき, 解析した全検体のクラスター分析の結果, 本症例のMeconium hydroceleの内容液は胎便成分に近く, なかでも在胎23週で出生した超低出生体重児の胎便成分に類似していた。以上から、本症例は, 在胎23週に近い時期に胎便性腹膜炎を発症した可能性があると考えた。プロテオーム解析を用いて, Meconium hydroceleの内容液や胎便性腹膜炎の腹水を分析することで, 胎便性腹膜炎の発症時期の推定やタンパク成分に基づいた新たな病型分類の提唱に繋がる可能性があり, 今後も継続した症例の蓄積と解析が重要と考えている。
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