研究実績の概要 |
Pheochromocytoma and paraganglioma (PPGL)は本邦においては約3000人が罹患していると報告されている。カテコールアミン産生による高血圧、頭痛などの臨床症状を特徴とする難治性神経内分泌腫瘍の一つであり40%以上の症例が遺伝性に発症することが知られている。転移症例は予後不良であり現在有効な根治治療法がなく新規治療薬、治療法の開発が望まれている。現時点でヒト細胞株が存在しないことが新規治療法開発における最大の問題点であるため、本研究では遺伝性PPGL患者由来iPS細胞を用いて世界初となる細胞モデル及び動物モデルを確立し、それらを用いて新規治療法、治療薬の開発を目指す。 PPGLは副腎髄質、傍神経節より生じる腫瘍であり、副腎髄質、傍神経節の発生起源はtrunk neural crestである。本研究ではPPGL患者由来iPS細胞を用いて疾患再現するためにヒトの胚発生を模倣し、適切な時期に適切な分化誘導因子を加えることによりiPS細胞を副腎髄質、傍神経節に分化誘導できないかPAX3, FOXD3, SOX10, TH, DBH等の分化マーカーをメルクマークとし検討を行った。 Neural plate borderからtrunk neural crestに分化誘導するために背腹軸、前後軸の形成がそれぞれWnt, BMP-Shh, FGF-RAのシグナルにより形成させることが報告されているため、各シグナルの条件検討を行った。 最後に副腎髄質、傍神経節がtrunk neural crestが発生において背側から腹側に移動することからFactor Xを分化誘導後期に加えたところ既報の分化誘導プロトコールと比較し、より短期かつ高効率にiPS細胞を副腎髄質、傍神経節様細胞に分化誘導できることが明らかとなった。
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