近年、大腸癌に対する効果的な薬物療法が相次いで創出され生存率は改善しつつあるが、2017年の大腸癌死亡者数は第2位と依然予後不良な疾患である。その原因として、癌細胞だけでなく微小環境を形成する間質細胞にも観察される高度な不均一性、すなわちheterogeneityが挙げられる。本研究の目的は、シングルセル解析技術を用いて大腸癌の機能的なheterogeneityを明らかにすることで、治療抵抗性に関わるこれまで同定されていない機能を有する細胞集団を特定し、新規個別化治療を確立することである。 本年度は胃癌や食道癌、大腸癌を含む複数の種類の固形がんの手術標本を対象にシングルセルRNAライブラリー作成を行い、NGSで解析した。NGS解析後のデータは、Rパッケージ Seuratを用いて単一細胞由来のRNA発現からその細胞集団の特徴や機能に着目し、解析を行っている。胃癌、食道癌などと合わせて、固形がん30症例を超えるライブラリー作成を行ってきた。大腸に関しては、手術を行った家族性大腸腺腫症由来大腸癌の患者の摘出標本から、腫瘍部、腺腫非密生部、腺腫密生部、正常粘膜部、リンパ節を採取し単一細胞懸濁液作成、ライブラリー作成を行った。現在、検体採取部位別に比較しながら、上皮細胞、腫瘍微小環境を構成する免疫細胞、非免疫細胞について解析をすすめている。また、通常型大腸癌のpublic dataとの比較を行い、検討した。
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