研究課題/領域番号 |
19K24024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
唐川 綾子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (90844176)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 眼内悪性リンパ腫 / 分子標的治療 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
申請者は、眼内悪性リンパ腫(IOL)の原発巣及び再発巣の免疫染色結果から、97%以上で病理学的にActivated B-cell typeであることを解明し報告した(British Journal of Haematology, 2018)。さらに、眼内悪性リンパ腫の原因遺伝子の探索のため、微量な検体しか採取できない眼内悪性リンパ腫の患者検体から、遺伝子を増幅し、高感度に眼内悪性リンパ腫の遺伝子変異検出可能な系を既に確立し、眼内悪性リンパ腫の患者検体に対し、Digital PCR解析を行い、新規変異遺伝子を含む4遺伝子(MYD88,CD79B,GENEX,GENEY遺伝子)を同定した。この確立した系を用いれば、眼内悪性リンパ腫の患者検体の、眼や髄液、リンパ節など広く応用可能である。また、富山大学薬学部の細谷らの共同研究にて、疾患関連遺伝子であるMYD88 及びCD79B遺伝子変異に対するシグナル阻害薬であるBTK 阻害剤は、網膜血液関門透過性が良好で治療候補薬であることが分かった。 本研究の目的は、Bruton 型チロシンキナーゼ阻害 剤(BTK 阻害剤)は、眼内悪性リンパ腫に対する疾患特異的な標的治療として有効であるか検証することである。 免疫不全ラットに眼内悪性リンパ腫遺伝子変異と同様の変異を有する細胞株及び患者由来眼内悪性リンパ腫検体を眼内移植する。これらの患者由来モデル動物に対して、BTK 阻害剤を内服投与し抗腫瘍効果を認めるかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、眼内悪性リンパ腫の未確立なセルラインを作成し、眼内悪性リンパ腫の遺伝子変異を有する細胞株を用いて、BTK阻害剤の有効性を検討し、その後、免疫不全動物に変異遺伝子を有する細胞株及び患者由来眼内悪性リンパ腫検体を眼内移植し、これらの患者由来モデル動物に対して、BTK 阻害剤を内服投与し抗腫瘍効果を認めるかを検証することである。本研究は、疾患特異的遺伝子である MYD88 CD79B 遺伝子をターゲットとした分子標的治療であり、さらに、内服薬であるにも関わらず眼内移行薬が可能な‘飲む目薬’の開発という点で、世界に初めて発信する革新的な治療となる。今年度は、以下を検討した。 (1)眼内悪性リンパ腫の疾患遺伝子である細胞株に対するBTK阻害剤の有効性:まず、眼内悪性リンパ腫の疾患遺伝子であるまず、眼内悪性リンパ腫の疾患遺伝子変異を有する細胞株、及び同様の遺伝子変異を有する他癌の細胞株を培養している。リンパ腫培養株の中には、特に中枢性悪性リンパ腫の細胞株では増殖能が元来不良であり、サイトカインを用いて培養を継続し、ある程度の増殖能を確保している。現在、これらの細胞株を用いて、BTK阻害剤の有効性(細胞増殖能、アポトーシス、NF-κBを濃度依存性に評価など)を検討中である。 (2)悪性リンパ腫免疫不全動物モデルの作成:眼内悪性リンパ腫の遺伝子変異を持ったリンパ腫細胞株を免疫不全マウスに眼内移植しており、細胞株の生着性について検討中である。既に申請者は、眼内悪性リンパ腫に高頻度にみられる遺伝子変異はMYD88、CD79B、GENEX、GENEYであることを見出しており、これらの遺伝子変異を有する悪性リンパ腫モデルの構築を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
現在、コロナウイルスの影響もあるが、今年度も引き続き以下を継続する予定である。 (1)今年度の検討により、細胞株の検討をより詳細に行う必要があるため、細胞株を用いた検討も引き続き継続する。 (2)悪性リンパ腫免疫不全動物モデルの作成:眼内悪性リンパ腫の遺伝子変異を持ったリンパ腫細胞株を免疫不全動物に眼内移植し、安定して、眼内に細胞株が生着できるかを確認する(継続)。 (3)悪性リンパ腫免疫不全動物モデルにおけるBTK阻害剤の有効性の検証:眼内悪性リンパ腫の遺伝子変異を持ったリンパ腫細胞株を用いた悪性リンパ腫免疫不全動物モデルに対し、BTK阻害剤を投与し、眼内の抗腫瘍効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究を施行している際に、細胞株での安定した腫瘍増殖能の確立や、有効性の検討、同一変異を有する他細胞株での検討など、細胞株での検証をより詳細に行う必要があり、次年度は細胞株での検討と、免疫不全動物モデル作成により多くの助成金を使用する予定である。
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