研究課題/領域番号 |
19K24026
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
遠藤 健太郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, プロジェクト研究員 (30844378)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 滑膜幹細胞 / 再生医療 / 細胞遊走 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、変形性膝関節症(OA)の構造改善薬シーズの探索を目指した新規滑膜間葉系幹細胞(滑膜MSC)遊走モデルの開発、および薬剤スクリーニングへの応用である。本年度はトランスウェルを用いた新規滑膜MSC遊走モデルの作成を実施した。滑膜は大きく分けて、基底膜マトリックスからなるlining layer, コラーゲンからなるsublining layerの2層から構成される。In vivoでは滑膜MSCはこれらの基質中に存在することから、この三次元微小環境をトランスウェル上で再現し、より生体に近い環境での遊走を評価可能なモデルの開発を試みた。まず24wellトランスウェル上層でMatrigel-type I collagen混合ゲルに封入した滑膜MSCを培養した。まず、様々なゲル濃度、細胞濃度の組み合わせを検討し、最終的なスクリーニングを想定した条件の最適化を行った。最適条件下で、下層に誘引因子としてFBSを添加したところ、24-48時間かけて有意に遊走細胞数が増加した。ゲルの存在により、通常のトランスウェルで認められる急激・短期的な濃度勾配ではなく、in vivoの血液-滑膜-関節液のような緩徐・長期的な濃度勾配が形成されたと考えられた。次に、OA患者の関節液中のMSC数は重症度に比例して増加することから、IL-1β, TNF-αにより細胞を前処理することでOA環境を再現したところ、前処理により遊走細胞数は有意に増加した。以上の結果から、本遊走モデルは生体内の環境・現象を再現可能であると考えられた。また、いくつかのgrowth factorの滑膜MSC誘引能を評価したところ、factor-Xが強力な誘引能を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画通り、生体内の環境・現象を再現可能な新規滑膜MSC遊走モデルの開発に成功した。また、factor-Xが滑膜MSCの遊走を誘導することが新たに判明し、追加で詳細な検討を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、スクリーニングへ向けて、本遊走モデルの24ウェルプレートから96ウェルプレートへのスケールダウンを実施中である。CV値やZ'-factorの結果から、スクリーニングモデルとしての妥当性を担保した上で、パイロットスクリーニングを実施する予定である。また、factor-Xによる遊走メカニズムの検討や生体での評価も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定より遊走モデルの開発が順調に進み、条件検討などに必要な試薬・器具類が少なく済んだため。また、今年度参加を予定していた学術集会が次年度に延期となったため。次年度使用額分は、factor-Xの解析に関連する試薬類の購入や、延期した学会の参加費に充てる予定である。
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