本研究では生理活性ペプチドであるアドレノメデュリン(AM)とAMの受容体活性調節タンパクであるRAMP2から構成されるAM-RAMP2システムに着目し、網膜血管疾患である網膜静脈閉塞症に対する治療薬としての可能性を検討することを目的とする。 網膜静脈閉塞症(RVO)は糖尿病網膜症に次いで多い網膜血管疾患であり、網膜毛細血管の脱落、虚血、および黄斑浮腫が生じると重度の視力障害をもたらす。申請者らは、AMとRAMP2のノックアウトマウスが、共に血管形成異常と浮腫のため胎生致死となることから、AM-RAMP2系が血管の正常な発生に必須であること、さらにAM-RAMP2系が生後の網膜血管の発達にも関連していることを明らかとしてきた。また、申請者は最近、新規の網膜中心静脈閉塞症(CRVO)モデルマウスを開発した。 本研究では、このモデルを応用して、AM-RAMP2系のRVOにおける病態生理学的意義、特に網膜血管透過性の維持、抗炎症作用、血管保護作用とそのメカニズムを解明し、黄斑浮腫や血管脱落による視力障害に対する新たな治療標的とすることを目的とする。 これまでのところ、AMおよびRAMP2ヘテロノックアウトマウスに対してCRVO処置を行った場合、野生型マウスと比較し蛍光眼底造影検査やフルオレセインイソチオサイアネート(FITC)デキストランによる血管灌流検査において、有意に網膜血管密度が低下することが明らかとなった。またAMヘテロノックアウトマウスではCRVO処置後の凝固因子PAI-1、炎症性サイトカインCD68、白血球接着分子Vcam-1、酸化ストレスマーカーp67phoxの発現が野生型と比較し有意に上昇していることが明らかとなった。 またマイクロパルスレーザーの網膜照射によりAMの発現が有意に低下することが判明した。今後AMの投与によるCRVO治療可能性の評価を行う予定である。
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