研究実績の概要 |
当初、本研究は、子宮内膜症病変組織における診断マーカー遺伝子の探索を目標に、病変組織に特徴的なエピゲノム環境にリンクした遺伝子発現の背景に想定する活性型エンハンサーの検証を計画した。先行研究成で同定したGATA6遺伝子(Izawa M et al. 2019)を除く92 遺伝子のメチル化修飾領域に活性型エンハンサーの有無を検証する研究である。しかし、COVID-19感染状況に伴う研究環境の制約から、当初の研究を1)解析対象遺伝子の絞り込み、2)子宮内膜症細胞における発現状況の検証へ変更した。病変組織に特徴的な遺伝子発現の解明は、低エストロゲン環境誘導を目的とするホルモン製剤治療の限界を克服する手掛かりとなると考えた。先行研究は(Izawa M et al. 2008, 2011, 2013)、病変組織のエピゲノム環境のもとで活性化したアロマターゼ遺伝子発現が局所エストロゲン環境の一因となることを示唆している。しかし、その分子的背景の詳細は不明である。 本研究では、子宮内膜症細胞における遺伝子発現の状況を網羅的に解析した。その結果、検証に用いた子宮内膜症細胞ごとにエストロゲン応答性遺伝子の発現が異なること、そして、子宮内膜症細胞に特徴的なエピゲノム環境にリンクして発現/抑制されるエストロゲン非依存性遺伝子の発現が異なることを観察した。これらの成績は、子宮内膜症の病変組織における遺伝子発現の多様性を示唆し、ホルモン製剤治療の限界克服につなぐ有用な知見となった。
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