網膜色素変性(RP: Retinitis Pigmentosa)は種々の遺伝子異常により視細胞死が引き起こされる疾患群であり、およそ70種類以上の原因遺伝子が同定されているものの、いまだ有効な治療法がないのが現状である。RPの病態には酸化ストレスが深く関わっており、ゲノムの構成単位である核酸塩基の中で最も酸化されやすいグアニンの酸化体、8-オキソグアニン(8-oxoG)はRP網膜におけるミクログリアの核とミトコンドリアゲノムに蓄積し、我々はこれまでに免疫を担当するミクログリアのゲノムへの酸化ストレスが関与していることを明らかにした。 また、網膜神経節細胞死によって引き起こされる緑内障は、本邦における失明原因の第1位となっており、緑内障患者の前房水や血清中、また緑内障モデル動物の神経節細胞に8-oxoGが蓄積することがわかっており、緑内障においてもゲノムの酸化を認めるものの、その病態については不明な点が多い。今回、緑内障におけるゲノムの酸化とその修復機構についての関与と意義について研究を行った。正常眼圧緑内障モデルマウスであるGlastノックアウトマウス、NMDA硝子体投与モデルマウスを用い、ゲノムの酸化修復機構であるMutyhをノックアウトしたマウスを交配させ、マイクロアレイを用いて検討、解析を行った。その結果、急性の緑内障モデルではNMDA投与後1日の時点でMutyhのノックアウトに関わらず炎症関連の遺伝子群の上昇を認めた。また、コントロール群と比較した場合、NMDA投与群および、Glastノックアウトマウスではマイクロアレイの結果では炎症による神経節細胞死の機序が考えられた。
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