研究実績の概要 |
昨年度までに、変形性関節症(OA)における疼痛を制御しうるM2マクロファージ由来神経ペプチド Peptide Lvを同定した。本年度は昨年度に作製したPeptide Lv ノックアウト(KO)マウスとを用いて炎症性サイトカイン産生、滑膜炎におけるPeptide Lvの役割を検討した。C57BL/6Jマウスより骨髄細胞を採取後M-CSF存在下で培養し、骨髄マクロファージ(BMM)を作製した。BMMをLPS及びLPS+Peptide Lvで刺激後、RT-PCR、ELISAにてTnfa mRNA発現及びTNF-a産生に対するPeptide Lvの影響を検討した。野生型 C57/BL6JおよびPeptide Lv KOマウスを用いて滑膜炎モデルを作製し、炎症性サイトカインの発現を検討した。LPS刺激によりTnfa mRNA発現、培養上清中のTNF-αの産生は増加したが、その増加はPeptide Lv存在下で有意に抑制された。また、滑膜組織におけるTnfa mRNA, Il1Bの発現は野生型に比べKOマウスにおいて有意に高かった。本研究結果からM2マクロファージによって産生される神経ペプチドPeptide Lvは炎症抑制に関与している可能性が示唆された。疼痛スコアの高い変形性関節症患者でPeptide Lvの発現が抑制されていたことから、Peptide Lvの減少による炎症の増悪が疼痛に関与している可能性がある。Peptide Lvは新規OA疼痛治療標的となるかもしれない。
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