研究課題
研究期間を通じてヒト多能性幹細胞(hiPSC)から内耳血管条辺縁細胞を分化誘導する系を構築した。最終年度においては、前年度までにほぼ構築されていた分化誘導系について、添加する栄養因子の濃度や基質の種類などを検討することで、系のブラッシュアップを行った。本研究で構築した系では、hiPSCを培養条件を変えながら60日間3D培養することで、辺縁細胞様細胞(induced marginal cell-like cells, iMC)を分化誘導することができた。iMCにおいては辺縁細胞の機能発現に必須である各マーカー遺伝子・タンパク質(タイトジャンクションタンパク質、チャネル、トランスポーター、ポンプタンパク質、転写因子など)の発現をqPCRや免疫染色で認めることができた。また、分化誘導した細胞と内在辺縁細胞の遺伝子発現様式を詳細に比較検討するために、iMCのシングルセル解析を行ったところ、タイトジャンクション遺伝子やイオン輸送関連遺伝子が同一のiMCで発現していることを確認できた。さらにFITC-Dextranを用いた透過実験により、iMC間にバリアが形成されていることを確認できた。このことから、本研究で分化誘導したiMCは内在辺縁細胞と同様のイオン輸送能やバリア機能を有していることが示唆された。一方、Ussing chamberを用いたNaK ATPaseの機能実験や電気生理学実験による機能解析は今後の課題として残っている。本研究で確立したiMC分化誘導法はこの先、難聴の発症機構や薬剤スクリーニングに広く応用できる有用な分化誘導系であり、現在特許申請中である(特願2021-144125)。
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Regen Ther
巻: 20 ページ: 165-186
10.1016/j.reth.2022.04.008