研究課題/領域番号 |
19K24041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 卓也 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師(病院)(助教) (60843323)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / 血管障害 / 脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、脂肪細胞が全身性強皮症の血管障害とどのように関わっているかを調べることを目的とし、全身性強皮症の疾患素因の1つと考えられている転写因子Fli1を脂肪細胞特異的に欠損させたマウス(Fli1 AdipoKOマウス)を用いて、同マウスが全身性強皮症様の血管障害を発症するか、また発症する場合にはその機序に関して検討を行う予定とした。 まずFli1 AdipoKOマウスが全身性強皮症様の血管障害を発症するかを調べた。FITC抱合デキストランの尾静注による皮膚血管の描出では、同マウスで血管の狭窄や途絶が顕著に見られた。またEvans blue尾静注による血管透過性の評価では、同マウスで色素の血管外漏出が目立った。また肺の組織を用いて血管の評価を行ったところ、Fli1 AdipoKOマウスでは高齢マウスで肺細動脈が有意に狭窄していた。以上より、Fli1 AdipoKOマウスの皮膚や肺に血管障害が生じることが明らかになった。 次に皮膚検体を用いて、血管の接着、安定性に関わる因子のmRNA発現量の比較、及び免疫染色を行った。Fli1 AdipoKOマウスの血管において、VE-cadherinやα-SMAの低下を確認し、同マウスで血管透過性の異常や構造異常を伴う血管障害が生じていることを裏付けた。 次に血管障害がどのように生じているかを検討するために、血管の新生に関して検討を行った。既存血管由来の新生血管には異常が見られなかったが、骨髄由来の新生血管では十分な周皮細胞に裏打ちされない未熟な血管が目立った。またFli1 AdipoKOマウスでは骨髄由来の新生血管の数も少なかった。Fli1 AdipoKOマウスでは骨髄由来の脈管形成に異常があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Fli1 AdipoKOマウスが全身性強皮症様の血管障害を発症するかどうかを調べ、発症する場合にはその機序に関して検討を行うという計画である。 現段階で、同マウスにおいて全身性強皮症に類似した血管障害が生じることを明らかにすることができた。機序に関しては、現段階ではまだ示すことができていないものの、Fli1 AdipoKOマウスでは骨髄由来の脈管形成に異常があることが示唆されたため、今後の機序解明に向けた重要な知見を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる機序の検討のため、Fli1 AdipoKOマウスの骨髄、特に骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSCs)に関して調べる予定である。はじめにFli1 AdipoKOマウスのBM-MSCsに異常が見られるかどうかをmRNA発現量にて確認する。BM-MSCsに異常があった場合は、その異常が骨髄中の脂肪細胞からもたらされているかどうかを検討するため、Wild-typeマウスのBM-MSCsとFli1 AdipoKOマウスの脂肪細胞の共培養を施行する。さらに単離脂肪細胞のアレイなどにより、どの因子が影響を与えているかを検討する。これらの検討により脂肪細胞と全身性強皮症の血管障害の関係、機序が分かり、さらにその責任因子についても解明できるのではないかと考えている。
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