研究課題/領域番号 |
19K24043
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 彩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50613105)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 皮膚炎症性疾患 |
研究実績の概要 |
CHD4はクロマチン構造を修飾し、アクセシビリティを調整することにより、遺伝子の転写を促進したり、抑制することが知られている。乾癬患者の皮膚組織を用いて、クロマチン構造を修飾する因子(CHD4)の染色を行なった。対比として、健常皮膚およびアトピー性皮膚炎の皮膚組織を用いた。凍結切片を用い、標識としてHRP、発色基質として3,3’-diaminobenzidine (DAB)を使用したところ、表皮および浸潤する免疫細胞の核での染色が確認された。アトピー性皮膚炎における表皮および真皮内の浸潤細胞も同様に核内の染色が確認された。真皮内の浸潤細胞に関しては、乾癬、アトピー性皮膚炎のいずれにおいても浸潤部位(真皮乳頭層か真皮上~中等層)によって、染色の強さに差は明らかでなかった。表皮においては、基底細胞の核が強く染色されるものの、有棘層の核では染色が減弱した。一方で、正常表皮は基底細胞、有棘層、顆粒層とも一様に核内が染色されたことから、炎症性疾患における表皮細胞の異常角化の原因として、CHD4の発現減弱に伴う機能不全が関与している可能性が示唆された。表皮および皮膚に浸潤する免疫細胞において、CHD4が疾患特異的に遺伝子発現を制御しているかの検討を今後、進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫染色の条件設定に時間を要したが、皮膚炎症性疾患における表皮および真皮浸潤細胞において染色が確認された。染色はHRPおよびDABを用いた染色のほか、蛍光色素を用いた染色でも確認を行っている。計画は概ね、予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
CHD4の染色結果については、個体差があり、全症例で同様の染色パターンが検出されておらず、今後、症例数を増やし、皮疹の性状や経過と染色パターンに関連があるかなど検討を重ねる予定である。また、乾癬やアトピー性皮膚炎の表皮は炎症および細胞増殖に伴い、核が腫大するため、染色が減弱する可能性も否定できず、免疫染色の評価のみならず、平行してトランスクリプトーム解析も進めていく。CHD4が表皮および浸潤する免疫細胞において、疾患特異的な機能を有しているかについての解析の検討を進める。
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