本研究においては、乾癬の病態における免疫細胞のクロマチン動態の把握ならびにクロマチン修飾因子が有する機能についての検討を目的としている。乾癬をはじめとする慢性の経過をたどる皮膚炎症性疾患においては核内のクロマチン動態が変動し、固定することにより、疾患の慢性化や再発に関わっている可能性が考えられる。昨年度は凍結皮膚組織から作成した凍結切片を用いて、クロマチン修飾因子(CHD4)の染色を行なったが、今年度はパラフィン包埋切片を用いて、検体数を増やし、さらなる検討を行った。また、免疫染色の際の標識については酵素標識のみならず、蛍光標識を用いた検討を行っている。表皮内の染色については正常表皮に比べ、核内の染色が減弱することが追加の検体においても確認された。また、酵素標識法では発現量の差の評価が困難であった真皮内に浸潤する免疫細胞については、蛍光標識を用いた多重染色を行ったところ、免疫細胞の種類により、核内における発現が減弱していることが示唆された。さらに、マウスの皮膚にイミキモドを連日外用し、乾癬様皮膚炎を誘導し、皮膚におけるChd4の発現の評価を行った。定量PCR法、免疫組織染色ならびにフローサイトメトリーを用いて、発現ならびに機能解析を行っている。浸潤する免疫細胞が少数であるため、解析方法の工夫が必要であると考えられる。CHD4が表皮および浸潤する免疫細胞において、疾患特異的な機能を有している可能性についてのさらなる解析の検討を進める予定である。
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